第三十一話 相性その十
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「身体が綺麗になるし疲れも取れるし」
「だから好きなのね」
「ガキの頃からな」
幼い頃からというのだ。
「一日一回は風呂に入らないとな」
「シャワーじゃ駄目なの?」
「シャワーも悪くないけれどさ」
それでもというのだ。
「やっぱりあたしは風呂だよ」
「そっちなのね」
「ああ、それこそこうした時はな」
湯舟の中で上機嫌のまま話す。
「何度でも入りたいよ」
「一回や二回じゃなくて」
「ああ、何回もだよ」
風呂に入りたいというのだ。
「是非な」
「そうなのね」
「飯食って風呂入ったらまた入るか」
「お酒飲んでるから気をつけてね」
「わかってるよ」
そのこともだというのだ。
「それもな」
「だといいけれどね」
「ああ、それにしてもな」
「それにしても?」
「この旅行の時も怪人が出て来るんだな」
このことについても言う薊だった。
「そうなんだな」
「そうね、八条町に出て来るのではなくて」
菖蒲も言って来た。
「私達について来ているのね」
「だよな、ストーカーみたいにな」
「ストーカー、そうね」
菖蒲は薊のその言葉にだ、神妙な顔になって述べた。湯舟の中で髪を頭の後ろで上にあげてまとめている。これは他の髪の長い面子も同じだ。
「そう言うべきね」
「だよな、あたし達を追って来るからな」
「そうなるわ」
「嫌なものだな、おい」
ストーカーという菖蒲の言葉を受けてだ、薊は実際にそうした顔になった。
「ストーカーなんてな」
「そうね、そのことはね」
「ストーカー程厄介なものはないぜ」
こうも言う薊だった。
「あたしはストーカーにつかれたことはないけれどな、喧嘩した相手にさ」
「つきまとわれたことがあるのね」
向日葵が薊に問い返す。
「そうなのね」
「ああ、そうなんだよ」
実際にとだ、薊は答えた。
「何度も何度も向かって来てな」
「しつこい相手だったのね」
「十囘位叩きのめしてやったよ」
つまりそれだけの数挑んできたというのだ。
「本当に鬱陶しかったよ」
「それ何時頃の話なの?」
菊はそれが何時かとだ、薊に問うた。
「一体」
「中二の頃だよ」
「ああ、中学生の時ね」
「その時にさ、空手やってていきがってる馬鹿に肩がぶつかったとか因縁付けられてなんだよ」
「それでなの」
「一回ぶちのめしたらな」
それを根に持って、というのだ。
「十囘だったんだよ」
「十回ね」
「流石に十囘で諦めたけれどさ」
「けれどその間ずっとだったのね」
「何度も何度も前に出て来て勝負しろだったんだよ」
そしてその都度だったのだ。
「いや、大変だったよ」
「正々堂々なのはいいことね」
菫はその相手のことについて言った。
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