第8話 面倒くさいのね
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出して、小倉の手の中に押し込んだ。輪ゴムで止められたそれは、ほぼ全クラス分あった。その中には、自作映画の入場券などもある。
「せっかく買ったもんだからさ。これ全部使ってきてくれよ」
「は?こ、これ全部?」
「これを昼ごはんにしようとしてて、これだけあれば十分だろうと思ってたんだけどさ。俺、やっぱりここから離れられないから。で、紫穂と謙之介に頼みたい」
「……仕方がねぇなぁ。おい、高田。お前は、これとこれとこれを……」
小倉が前売り券の半分を高田に渡そうとすると、田中がその手を掴んで阻止した。
「ダメダメ!手分けなんてするなよ。ちゃんと"二人で"行ってくるんだ。」
「いや、おかしいだろ。明らかに手分けした方が効率が……」
「良いから2人で行ってこい!そうしなきゃ怒るよ?謙之介は不良の癖に、ドMで羞恥プレイが大好きな変態だって言いふらすよ?前の学校で男を襲って退学になったって事にするよ?それでも良いの?」
「……分かったよ。行きゃ良いんだろ、2人で」
小倉としては、もう既に底を打ってるであろう自分のイメージの悪さがこれ以上どうなってしまおうが、それほど大した事ではないように思われたが、田中がここまでしつこく要求してくるんだから、従っておいてやろうという気持ちにはなった。キョトンとしている様子の高田を連れて、小倉は、騒がしい校内へと歩みを進めた。
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「次は2-Cの大学芋か」
「そうね。そこが現状、一番空いてるから、その判断は妥当だと思うわ」
小倉と高田の二人は騒がしい校内を、さっきからこんな具合で淡々と巡っていた。無駄な会話を交わすでもなく、まるで何かの作業をしているように。小倉の手の中のトレーには、様々な模擬店の料理が載っている。田中はこれを1人で平らげようと本気で思っていたのだろうか。いや、色んな所から田中の所に売り込みに来て、それに気を遣って応えているうちに、ほぼ全クラスコンプリートしちゃったんだろうな、と小倉は思った。
「お、小倉じゃないか」
「おお、保坂。こいつ取り替えてくれ」
2-Cの屋台に立っていたのは、日焼けした顔に坊主頭、謹慎明けに小倉にホームランを打たれたあの保坂だった。小倉から前売り券を受け取りながら、保坂は小倉に笑顔で言った。
「……不良とか何とか、良い噂は聞かないが、安心したよ」
「……それはそれは、ご心配ありがとう。で、何で安心したんだ?」
「ちゃっかり彼女作っちゃってさ。もっと浮いてんのかなって思ってた」
「は?彼女?」
小倉は首を傾げたが、隣でいつもと変わらぬ無表情を保っている高田の存在に思い至り、呆れたように
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