第8話 面倒くさいのね
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いるという事実のせいか。用意していた物はどんどん売れていった。
「二人ともお疲れ!交代の時間だよ!」
「別に、これくらいの事はな……お前こそ働きっぱなしで良いのか?」
「責任者なんだから、ずっと居るのは当たり前だろ?当然の事をしてるまでだ」
田中はずっと模擬店の管理にかかりきりで、自由時間など全くとっていなかった。それを本人は不満に思っている様子もない。模擬店が繁盛しているのは、イケメンで知られる田中がずっと店先に居るから、というのが主な要因だった。彼が呼び込みをやるだけで、少なくとも女子は必ず足を止める。そして、高確率で売り物を買っていく。
「そうは言ってもな、不公平だろうがよ。お前、昼飯すら食ってないじゃねえかよ。いい加減休めって。」
「そこ平等にしたら、また別の不平等、生まれちゃうだろ?」
「はァ?」
「誰かが俺と一緒に、文化祭回るって訳だ。俺の取り合いになっちゃうだろう?だったら、ずっと働いて、みんな平等に俺と回れないようにする。これが賢明さ」
「……呆れた。どんだけ自意識過剰なんだお前」
悪戯っぽく笑う田中に、小倉はため息をついた。が、憎らしい事に、田中の言うことは一理あるかもしれなかった。田中が休憩に入れば、この鼻から抜けるような男前の事だから、一人ぼっちで放ってはおかれまい。必ず、「暇なら一緒に色々見て回ろうよ〜」と、田中を捕まえようとする連中が殺到する。田中と一緒に、下らない文化祭を見て回った所で、それが何だという話だが、そういう下らない事に必死になるのが高校生である。必死に多くの人間が殺到するような場には、必ず軋轢や摩擦が生じるものだ。だったら、最初から暇にならなければいい。それを自分から言われると、ナルシストのように聞こえて憎らしいが、田中の言うことを否定し切れないのも、何とも情けない事であった。
「お前が休まねぇなら、俺も手伝うよ。お前だけ働かしておくのは気が引けるしな」
小倉は、他でもなく自分自身の為にこう申し出た。高校生の下手な模擬店の料理なんて楽しみにするようなものでもないし、内輪ノリが強烈に反映された自作映画や劇などを見る気にもなれなかった。田中は周囲の人間の為に無休を貫こうとしているが、小倉は小倉で、休憩時間だと言って放り出されたら自分自身が途方に暮れてしまうのだ。田中が無休である事を気遣っている体を装って、自分も仕事を続ければ、何をする当てもなく無為に時間を潰すだけの退屈な時間から逃れる事ができる……しかし、そんな小倉の思惑は、あっさりと打ち砕かれてしまった。
「え?ダメだよ。謙之介と紫穂には、俺の持ってる前売り券を使ってもらわなくっちゃいけないからね」
田中は財布から、各クラスが最低限の売り上げを保証する為に売っていた前売り券を取り
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