第6章 流されて異界
第106話 βエンドルフィン中毒?
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あなたの外見に関する情報を操作する必要など存在しない。
童謡をアレンジした曲に重なるように、そっと呟く有希。他の誰にも聞こえないレベルの声。しかし、普段から彼女の声に集中している俺には間違いなく聞こえるレベルの声で。
ほんの軽い冗談。そもそも俺の外見の情報を書き換える……つまり見た目を変える事は簡単。別に有希に頼まなくても俺の持って居る仙術で十分に対応出来ます。しかし、そんな事を俺自身が認める訳がないのも事実。
高が髪の毛を黒く染める事さえ拒否した俺が、自らの意志でそんな事を為す訳はありません。
「普段はとても頼りがいがある。でも、時々、とても幼く感じる事もある」
淡々とした。無と言う感情のみに彩られた声音で語られる内容はまるで……。
「何時までも笑って居るあなたを見て居たい」
そう思うには十分な容姿を持って居る。
これは最早愛の告白。ただ、彼女自身がそれを正確に理解しているかどうかは判りませんが。
それに、彼女とハルケギニア世界の湖の乙女に関係があるのなら既に……。
流れ行く音楽――。何時の間にか十二月に相応しいクリスマスの定番へと変わった店舗の中心で、暫し無言で見つめ合う二人。
咄嗟に返す言葉を失った俺と、
沈黙を是とする彼女。
そうして次の瞬間、ツルに手をやり、自然な仕草で彼女の容貌の一部と化して居た銀のフレームを外し、素顔を俺に魅せる彼女。
そう。普段よりも幾分か幼い……。表情から少し鋭角な部分が消え、年齢そのままの彼女が其処に居た。
ずっと見て居たい、と言ってくれた表情で彼女を見つめ返す俺。ただ、少し作り物めいた表情に成って居た可能性もゼロではないのですが……。
メガネを外したのは、――おそらくですが直接、彼女自身の目に俺を映したかったから。ただ、そんな事を言われた経験など皆無の俺が、自然な笑顔など浮かべられる訳などなく。
更に厳密に言うのなら、ずっと。一生、彼女の元に居られる訳ではない事が、俺の心の奥深くに澱のように沈んで居たのも事実……ですから。
真っ直ぐに見つめていた瞳に一瞬、何か複雑な色が浮かび、そして視線を外して仕舞う有希。何と言うか、陰の気と陽の気が複雑に混じった奇妙な雰囲気。おそらく彼女も俺がそう遠くない未来。ハルケギニアとの間にゲートが開けば、彼の世界に俺が帰らなければならない事に気付いたのでしょう。
「そうしたら、さっさと買い物を済ませて家に帰るか」
何時の間にかそうする事……。彼女が言う二人の家に帰る事が当たり前に成りつつある現状に少しの違和感を覚えつつも、そう話し掛ける俺。
それに、有希のマンションの部屋からは、何故か俺の気を強く感じて居るのも確かです。
おそらく以前に俺の異世界同位体が訪れた時か
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