暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
舞台を色鮮やかにするならば、裏方の存在は不可欠だ
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暗い部屋
無数の画面から零れる光がぼんやりと室内のディテールを照らしている。それらは持ち主を包囲するように円を描いて設置されており、縦に長いモニターの山が形成されていた。下はブラウン管、上部に行くとデスクトップが整然と並んでいる。それらの隅には数知れない多くの配線が中心に向かって伸びていて、まさに花が地面の中の養分を吸い取って茎に送っているかのようだった。
中心にいる男は自身の眼鏡にパソコンの画面を反射させ、ひたすらキーボードを叩いている。座布団に腰を下ろし、小さい机に置いたノートパソコンに向かうその姿はどこか貧乏臭く、パソコンの隣に置かれたカップラーメンが余計にそのイメージを膨らませる。
――私は偽善者だ。
男はふと忙しく動かしていた手を止め、ゆっくりと右斜め上のモニターへと目をやった。そこには殺し屋統括情報局の仲間同士が撃ち合うという悲惨な絵図が生まれていた。彼らの姿は斜め上から見下ろす形で写っているが、詳細は定かではない。
キーボードから右手を離して、スープを吸って伸びた麺しか入っていないカップラーメンに突っ込まれた箸を握る。器用な手つきでそれを啜って
咀嚼
(
そしゃく
)
する彼は独りでに言葉を口にした。
「偽善というより、利己的だな。後悔はしていないが」
***
男は殺し屋統括情報局の創設者であり、破壊者になる予定の人物である。予定というのは、まだその行為を取っていないからだ。
彼について知っている人物は誰もいない。殺し屋や阿久津からは『局長』としか認識されておらず、他のヒントといえばしわがれた声ぐらいだった。それ以外に情報を与える気はなく、常に完璧な指示を本部に飛ばし、むかし手に入れた多くの交友関係をツタに組織の幅を広める完璧超人という彼らの認識のもと存在し続けた。
しかし彼は、長い間培ってきたそれを自らの手でぶち壊そうとしている。
もともと殺し屋統括情報局という組織が生まれたきっかけは、殺し屋が裏の世界で起用されにくい職業になったからだった。警察の目が厳しくなり、暴力団による白昼堂々の抗争で呼ばれる事は少なく、暗殺依頼にしても、ネットの普及と監視カメラの増大で、当時の殺し屋達は新たな『日常の脅威』に苦戦を強いられた。
そこで横浜に設立されたのが殺し屋統括情報局であり、創設者は当時横浜の市議会委員に所属していた彼だった。優秀で堅実な彼には多くのバックアップがあり、その中には暴力団や殺し屋もあった。無論、彼が実際のところ真面目でない証拠だ。
彼の組織開拓は滞りなく進んでいった。表では街の改革に必要な課題を並べ、それを元に恒久的な政策を立てていく。裏ではそれとは真反対の『力』で圧していく組織を整えていった。数年後には、殺し屋統括情報局が動き
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