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101番目の舶ィ語
第八話。蜘蛛タンク
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話に出る前にアランからDVDを渡されていなければ、そもそも俺が一文字疾風に憑依していなければ、ヒステリアモードになる事はできなかったし、ヒスらなければ対処法なんかも浮かばなかっただろう。

「ああ……なんとか切り抜けたってのが今でも信じられないな」

「私もあんな方法でなんとかされたっていうのが信じられませんので、やり直しを要求したいところです。今度は殺されてみませんか?是非」

冷ややかな視線を向けながらまるで食事に誘うように気楽に言ってくる一之江。

「女性の頼みだからね、是非……と言いたいところだけど君の本心ではないようだからね。
ご遠慮しとくよ」

やり直したいというのは彼女の本心だろうが人を殺したい、というのは本心ではない。
なんとなくだが彼女の考えが解る。
彼女は好き好んで人を殺したいわけではない。
殺さなければならない理由や使命がある。
それと、あんな解決方法(抱きつき行為)は認めたくない。
と言ったところかな。
……最後に関しては本当に悪いと思っているが。

「まあ、見張る一番の理由は囮ですけどね。貴方は狙われ易いですから」

「……ストレートな理由だね」

囮と堂々と言われるとなんとも言い難い気持ちになる。
もっと他に言い方あるんじゃないか?

「では、そうですね……色々とお話しを……おや?」

「ん?」

一之江が目を丸くして視線を向けた先には一匹の蜘蛛がいた。
とても小さいサイズでよく見なければ赤い単なる点にしか見えない。
だが、一之江はその蜘蛛をじっと見つめている。

「一之江、この蜘蛛が……」

どうかしたのか、と続けたかった言葉を口から出せなかった。
一之江が瞬きをするかしないかという一瞬の間に、音もなく俺の目の前まで距離を詰めると、俺の頭をジャンプして片手で鷲掴み、着地と同時にぐいっと強く引っ張ったからだ。

「……ッ??」

頭から激痛を感じながら、俺はされるがままに奇妙な前屈姿勢になった。
直後。
俺の頭があった位置を、何かが掠めて飛んでいった。

「今のは?」

「虫ですね」

一之江は呟くと、俺にそのまま軽やかな足払いをかけて転ばせ、自分の後ろに倒れ込ませた。

(ッ??
ヒステリアモードなのに、彼女の素早い動きに反応できない??)

何から何まで俺の動きを完全に制御した動きにより俺は反応することもできずに、頭から床に叩きつけられた。

「ぐっ、何を……??」

やっぱり言葉は最後まで出なかった。
頭と足がやたらと痛いが、その痛みが吹き飛ぶくらいの物を俺は一之江の上履き越しに見てしまったからだ。

(何だ、あれは……?)

俺がさっきまで立っていた場所。
……そこには、赤い点が無数に存在してお
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