コヨミフェイル
006
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もうすぐチャイムもなりそうですからお話はここらへんでお開としましょうか。では、戦場ヶ原先輩と阿良々木先輩、残り少ない青春を謳歌してくださいね」
と、言って扇ちゃんは階段を二段飛ばしで駆け降りていった。
僕はそれを見送りながら心の中で扇ちゃんの言葉を反芻していた。
僕はただ家族に拒絶されることを恐れているだけで言い出せずにいるだけなのでは?
そうかもしれない。いや、そうだろう。
現に僕は子供とみなしている千石にほぼ全てのことを打ち明けている。状況が状況でも他にどうにでも嘘をでっちあげることができたかもしれないのに、僕は自分の体の秘密を打ち明けた。
拒絶されてもかまわなかったからかもしれない。
自分のことでも突き付けられて初めて気付くものがあるということを思い知らされたような気分だった。
これは真剣に僕の体の秘密を打ち明けるか考え直さなければならなくなったと思いながら扇ちゃんとは逆の方向、三年の階に向かって歩を進めた。
って、ん?…………残り少ない青春?
…………ああ、高校生活のことか。
高校生活だけが青春とは思わないけどな。
しかし、それにしてもなんで戦場ヶ原は最初から扇ちゃんにあんな無愛想な態度をとらないといけなかったんだ?
扇ちゃんのひょうひょうとしたところは気に入らない忍野を思わせるけれど、扇ちゃんは見た目より嫌な奴じゃないし、できれば仲良くしてほしいところなのだ。
「なあ、戦場ヶ原」
僕は戦場ヶ原に声を掛けたつもりだったが、横を向いたそこには戦場ヶ原はいなかった。目線を踊り場に移すと、戦場ヶ原は、先程の場所から一歩も動かずに静かに扇ちゃんが駆けていった階下を見つめていた。
「戦場ヶ原」
「私は知らないわ、忍野扇何て言う後輩がいるなんて」
「え?」
「以前に言ったと思うけれど、私は編入生を含めて入学生を全て調べあげているのよ」
「ああ」
そう、重さがなかったとき戦場ヶ原は新しく入学する後輩がいることを予想して調査していたのだ、対策を講じるために。まあ、結局神原に重さがないことを知られたのだが。
「だけど、忘れているだけじゃないのか?半年も経ってるんだから忘れててもおかしくねえだろ」
「まあ、そうなのかもしれないのだけれど。それにしても、あまりにも心当たりがないのよ、それこそ奇妙なほどに」
それに、あの人に親戚がいることは想像できないわ。
と、戦場ヶ原は心底不愉快そうに扇ちゃんが去った方を見つめたまま言った。
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