コヨミフェイル
005
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「阿良々木くんには心底呆れるわ」
それが戦場ヶ原の第一声だった。二人で並んで中庭のベンチに座り、弁当を開けたところで戦場ヶ原は言った。
「一時間目のことを言っているのなら僕はそんなことを言われる筋合いはない。問題はちゃんと解いたはずだぜ」
少し誇らしげに言ってみた。
「あれぐらいの問題が解けて当たり前でしょ。それとも阿良々木くんは実はあの問題を前日に徹夜をして解いたのかしら」
「ぐっ………」
「ましてや私と羽川さま………、羽川さんに教鞭をとってもらっているにも拘わらず、あのような低級の問題を解けないなんていう事態が有り得るかしら。いや、有り得ないわ」
「なんで反語なんだよ。明らかに羽川を様づけしたことをごまかそうとしただろ」
確かに、席につき、落ち着いてから再度問題を見てみると、結構簡単だった。けれども、土壷にはまると、どんな問題も何倍にも難しく見えるたりするのだ。
「私の誤称を指摘できて良かったわね、阿良々木くん。誇ってもいいわよ。何と言っても、それはもう阿良々木くんにすれば、一生味わうことのない名誉なことなのだから」
戦場ヶ原は立ち上がって僕の前で腰を手を当て、仁王立ちになって見下すように言った。
戦場ヶ原は何でこんなにも性格が歪んでいるのだろう。
僕って戦場ヶ原のどこに惹かれたんだっけ?
「だったら何がお望みだったのですか?ガハラさん」
と、嘆息してから言った。
ガハラさんというのは僕が定着を図っている戦場ヶ原のニックネームである。
「そんなに教えてほしいのなら構わないのだけけれど、私の望みを聞いたら最後二度とこの世界に戻って来れないわよ。その覚悟はあるの、阿良々木くん」
「お前の望みは人類殲滅とかその類いかっ!」
実際に戻って来れなくなりそうだから話さなくていい!
「私の望みは阿良々木くんが、簡単な問題ごときに苦しみ悶えている哀れな醜態をクラスメートに晒しているのを見て、充足感に満たされることだったのだけれど、宛てが外れたわ。なぜみんなにわかりやすいようにもっと苦しみ悶えなかったのよ」
「なるほど確かに、僕じゃなかったら人間不審に陥って戻れなくなりそうな振りだな」
というか、解けるのは当たり前だとかなんとか言ってなかったっけ。
戦場ヶ原は一体彼氏を何だと思っているのだろうか?
「いい男ね」
「どうせ、前に『都合が』が入るんだろうだろ」
「違うわ。『使い勝手が』に決まっているじゃない」
「もっと酷いわ!!」
彼氏が所有物にまでおとしめられた!!
「それに比べて私なんていいことずくめの女よ」
「性格がいい、虫がいい、要領がいいの三拍子だろうが!」
「それほどでもないわ」
「褒めてねえよ!!」
どこからどう聞いても皮肉だろうが!
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