暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
005
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全に自制心を失していた。好きな相手が弁当を作ってくれたのだから喜ぶのは当然のことなのだが、神原の今の状態は異常だった。というか、神原は初めから異常だったな。失念していた。露出狂で百合でBL愛読者で一時はストーカーだった異常者だったな。
 「これは夢だろうか。確かめなければなるまい。阿良々木先輩、私の胸を抓ってくれ」
 「落ち着くんだ。これは夢じゃないし、胸も抓らない」
 抓った瞬間退学処分だ。
 「そうよ、神原の胸を抓る権限は私にしかないのよ」
 「ねえよ!ていうか、さっさと食べるぞ」
 後七分もないぞ!食べ切れるのか!
 「阿良々木くんは私の作った弁当を、そして私たちは阿良々木くんの弁当と私の弁当を二人で分け合いましょう」
 そう言うと、戦場ヶ原は神原と密着するぐらいに並んで座って二人のちょうど真ん中になるように二つの弁当を二人の太股の上に置いた。
 「では、いただきます!」
 「「いただきます」」
 神原の声の後に続けて言って僕と戦場ヶ原も食べはじめた。
 食べ始めてから何故か言葉が交わされなくなった。一番話題を提供するであろう神原は弁当に必死で、戦場ヶ原はただだまだまと食べている。僕も特に話したいことがあるわけではなかったから何も言わなかったが、ふと今朝からのどたばたで言いそびれていることがあると気付いた。
 「なあ、戦場ヶ原」
 「何よ」
 「デートしねえか?」
 「後輩の前で何発情しているのかしら、この単細胞生物は」
 「ゴミの次は単細胞生物なのか」
 後単細胞生物に発情期があるのだろうか?
 「単細胞生物も捨てたものではないぞ、阿良々木先輩。何と言ったって、私たちがあらゆる細胞を駆使しなければならないところを彼等は一つの細胞で済ませているのだぞ。カッコイイではないか!」
 神原は手を止めて、それだけ言うと、再び手を動かしはじめた。
 「カッコイイのか?」
 「そうよ、とってもカッコイイわ、響きも癌細胞生物みたいで」
 「癌細胞生物ってそこはかとなく存在を否定されているようで嫌だ」
 「声を掛けないで、癌細胞が移るわ」
 「移らねえし、僕は癌細胞生物でもない!」
 「で、藪から棒にデートのお誘いとは何事なのかしら?」
 と、気が済んだのか戦場ヶ原は唐突に話題を戻した。
 「あれから一度もデートしていないなあって思って」
 「誰からか唆されたのかしら?」
 「うっ……」
 本当戦場ヶ原の前では隠し事はできないようだ。
 「今朝八九寺に会ったって言っただろ。そんときに言われたんだよ」
 「ふん、あの小学生の仕業なのね。目障りだわ。見えていたら今すぐにでもパチンとしたいところだわ」
 「戦場ヶ原でも八九寺に手を出そうものなら、命に変えてでも止めるからな!」
 一番手を出しているのは僕だ
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