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闇物語
コヨミフェイル
004
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し、羽川の期待も裏切ることになる。これは避けなければならない。
 ならば、衆目に晒されながら解くしかない。そもそも問題を解くことなんて戦場ヶ原の振りにしては簡単だ。解いて、正解を貰いさえすればいいのだ。そうすれば今日一日の戦場ヶ原の機嫌を取ることができるだけでなく、羽川の中での僕の株が上がる、つまり羽川の胸に一歩前進できるというものだ。ふふっ、これを一石二鳥とは言わずして、何を言うのか。
 これを機に二人から矢継ぎ早に指名されてもその時その時で対応すればいいのだからな。
 今までもそうしてきたじゃないか。
 こんなことでめげる僕じゃないぜ!
 悠然と立ち上がり、机の間を通り、黒板の前に立った。黒板のところまで来る間、四方八方からの視線をひしひしと背中に感じていたが、今の僕には取るに足らないことだ。
 黒板の前に立ってからも背中に突き刺すような視線を強烈に感じるが、痛くも痒くもない。いっそ、涼しく感じると言える。
 戦場ヶ原主導の教室ぐるみのいじめに遭ってるみたいだったが、僕はそんな無言の圧力なんかに屈したりはしない。チョークを手に取り、黒板の問題を怨敵であるかの如く睨み据える。静かに問題に目を通す。
 はっ、なんだ、たかが論証問題じゃないか。僕も見下されたものだ。
 一瞬で解いて戦場ヶ原の鼻を明かしてやるぜ。それでもって、羽川の胸を文字通り手中に納めるのだ。
 論証問題が今の僕には四則計算に見えた――わけではなかった。
 ……ん?ここをこうやって、これをこうとして、これをこう代入すれば、出てくるんじゃなかったっけ?…………あれ?
 証明の初筆で手が固まってしまった。
 書きはじめる際に頭の中で証明の大まかな筋書きを組み立てる癖を付けていた僕はそれに失敗してチョークを手に持ったままフリーズしていた。背後は水を打ったように静まり返っていて無言の圧力を強めている。
 何と言う極限状態なのだろうか。
 そのせいで頭をフル回転にして間違いの洗い出しを試みるが、空転していた。
 ええい、ままよっ!!
 筋書きが穴だらけのままだったがチョークを走らせた。
 槍と化したクラスメートの視線に背中を穴だらけにされるよりかはましだ。
 だが、意に反してチョークを掴む手が震える。
 それで字も乱れに乱れる。今までにないほどの恥をかかされている気分だった。それも相俟って、解答のゴールが見えない。それでも少しでも手を止めてはいけないような強迫観念の取りつ憑かれて、必死に手を動かした。
 戦場ヶ原はどんな顔をして哀れな僕を見ているのだろう。振り向くことなど叶うはずもなく、想像でしかないが、きっと充足感を湛えた冷笑を浮かべているだろう。
 なんとか解き終えて、一通り間違っていないか目を通してからクラスメートの視線から逃げるように目を伏せて振り返り
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