コヨミフェイル
004
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僕がどこかの女子に現を抜かしていないかという不安からくるちょっとした確認なのだ。そう思うと、戦場ヶ原にも高校生女子相応の女心があるのだと安心したりする――確認する方法はともかくとして。
「あらそう」
戦場ヶ原はそれだけ言うと、前に向き直って階段を上りはじめた。
「ちなみに私の千里眼はただの千里眼じゃないのよ。名付けて千里銃よ」
「マジかっ!!」
やっぱり千里眼持っていたのかよ!
ていうか、千里銃ってなんだよ!威力計り知れねえよ!!
「せいぜい気をつけることね」
「そうさせてもらいます!」
僕は先を行く戦場ヶ原を追い掛けた。
教室の近くまで来ると、決まって戦場ヶ原は口を閉ざす。話を無理矢理切って、黙り込む。クラスメートに明るい(?)時の自分を見せたくないらしい。
まあ、けど学校の外で二人で快談(?)しているのを度々目撃されているからあまり意味を成していないし、校内でも弁当を食べてるときもそれなりに和気あいあいとしている。
教室に着き、自分の席についた。
教室での僕の席は真ん中辺りで、戦場ヶ原の席は窓際に位置している。
ラブコメとかではカップルって大概近いよな。
素直に羨ましい。
僕と戦場ヶ原とは横の並びで一緒だったが、間に二人挟んでいる。まるで僕と戦場ヶ原のプラトニックな関係を描いているようだ。かといって、非プラトニックな関係が欲しいわけではないのだが、もっとこう、どきどきすることがないかなあ、それこそラブコメのように、なんて考えていたらいつの間にか朝のホームルームが終わっていて、一時限目が始まっていた。
慌てて一時限目の授業である数学の用意を机に出した。
すでに数学の担当の先生が来ていて黒板に何か書き始めていた。この数学の先生は老齢の割に書くのが速い。それで生徒から苦情が出るのだが、御構い無しである。今では無駄だと知って苦情を言う生徒はいない。その代わり、生徒の間ではハゲと呼ばれていたりする。
置いていかれまいと急いでノートを開いて前を向いたが、その必要はなかった。先生がほうけた顔で手を止めていたからだった。
一点を見詰めて呆然としているようだった。つられるようにして先生が見詰めている方に目を向けると、その光景が目に飛び込んできた。
戦場ヶ原がぴんと高らかに手を上げていたのだ。
教室が騒然とした。かの委員長の中の委員長の羽川でさえ黒板から目を離し、大きく見開いた目で戦場ヶ原を見ていた。
僕にとってもその光景は信じがたいものだった。当てられても、「分かりません」と、分かっているにも拘わらず、答えていた戦場ヶ原が当てられてもいないのに、手を挙げている。
真っすぐ上げている。
本当に今頃太陽は西から昇っているのではないのかと思ったが、僕がそんな戦場ヶ原が
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