コヨミフェイル
004
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離は一ミリもないだろう。
達人顔負けの寸止めだった。
「意外かもしれないけれど、今日は機嫌が良い方なのよ」
戦場ヶ原は澄んだ声で言った。
「…………」
要するにその機嫌を損ねたらその二つの眼球をもって償いなさいということなのだろう。対価があまりにも不等ではないか?後ここで真実を言っても眼球をえぐられる気がするのは僕だけだろうか?
まさか自分の通っている学校の階段でこんな究極的な選択に迫られるとは思いも寄らなかった。目潰しされても激痛で起きた忍に血を少し与えて、治癒能力を上げれば、どうにかなるだろうが、されたくない。彼女に目潰しをされたなんていう思い出なんて作りたくない。
それに確かこの階段はバナナの皮に滑って落ちてきた戦場ヶ原を受け止めた場所のはずだ。
そんな思い出の地で目潰しって。
思い出が塗り替えられるよ?あまりと言えばあまりの仕打ちじゃないか?
「今日は蟹座が星占いで一位だったのよ」
指を微動だにせず淡々と言う戦場ヶ原。
そんなことで機嫌が良くなるのか。
……単純だな。
というか、本当に機嫌が良いのか?
いつも無表情でわからねえよ。
「ラッキーアイテムは彼氏の眼球」
「それは断固違うと言えるぞっ!!」
怖えよ!!
呪いの儀式とかのレシピみたいになってんじゃねえか!!
僕を呪うつもりなのか!?
眼球えぐられただけでも十分呪い以上の仕返しになると思うけどなあ!
「あら、生きていたのね、阿良々木くん。うんともすんとも言わないからてっきり死んだのかと思ったわ」
戦場ヶ原の平淡な口調にまるで立ったまま死んだ彼氏に対する驚きの色が見えなかった。
「僕も死ぬかと思ったよ」
「まるで全て私のせいだと言わんばかりね」
「ごめんなさい」
お辞儀せずに言った。
「たまたま八九寺を見つけて、そう言えば、全然会ってないなあと思って声を掛けたら、これが思った以上に話し込んでしまったんだ」
「そう、やはり小学生と乳繰り合っていたのね」
「今の僕の言葉にそれと受け取れる言葉は一切含まれていなかったよなあ!」
「阿良々木くんがあの小学生を前にして理性を保っていられるとは思えないわ」
「うっ……」
至極その通りだった。
……僕ってそう思われているのか。
これからは気をつけないとな。小学生を前にすると理性を失う高校生というレッテルだけは払拭しないとまずい。
軽く警察送りのレベルを越えている。
「前も言ったと思うけれど、私は浮気には寛容なのよ。阿良々木くんが誰の男かわかっている限りね」
ここでようやく戦場ヶ原が腕を下ろしてくれた。
「ああ、わかってるよ」
と、答えることを知っていたからだろう。
きっとこれはちょっとした確認。
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