コヨミフェイル
004
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に重みを奪い、存在を奪う。
忍野メメの言葉を借りると、
「おもし蟹ってのはね、阿良々木くん。だからおもいし神ってこと何だよね。分かる?思いし神ってことだ。また、思いとしがみ―しがらみってことだ。そう解釈すれば、重さをを失うことで存在感まで失ってしまうことの、説明がつくだろう?あまりにも辛いことがあると、人間はその記憶を封印してしまうなんてのは、ドラマや映画なんかによくある題材じゃないか。例えて言うならあんな感じだよ。人間の思いを、代わりに支えてくれる神様ってことさ」
ということだった。
つまり、戦場ヶ原は現れたおもし蟹に母親を押し付けた。
戦場ヶ原は重さを代償に母親の思い出をおもし蟹に押し付けたのだ。
娘を生き贄のように幹部に差し出し、助けてくれなかった母親のことを、あのとき自分が抵抗しなければ、そんなことはなかったのかもしれないと思い悩むのをやめた。
思うのを止めた。
母のように心の拠り所を求めたのだ。
しかし、楽になってしまったことを、後悔しない日は、一日だってなかったと戦場ヶ原は言う。
周囲との不調和からではなく、思いを失ったからだそうだ。
今では忍野の力を借りて重みは思いとともに戦場ヶ原に還った。
おもし蟹に押し付けたものを自分で背負ったのだ。
そして、絶縁状態だった神原と縒りを戻し、貝木との因縁に決着をつけて今に至る。決して道程は短くなかったのだろうが、戦場ヶ原はこうして僕と話してくれる。なんだかそれだけで幸せなのだ。
「それほどのことでもないと思うが」
戦場ヶ原に追いつくと、横に並んで歩いた。戦場ヶ原がいるということは朝礼にはまだ時間があるということだ。そうなれば、急ぐ必要は毛頭ない。
「そうかしら。今頃太陽は慌てて西から昇っているわ」
「僕にそんな地球の自転を操る超次元的能力が備わっていたのか!」
「阿良々木くんにそんな力があらのなら、ゴミには宇宙を創造する力を持っていることになるのだけれど」
「そうでした!阿良々木暦は戦場ヶ原様から見ればゴミも同然。否、ゴミ以下の存在。思い上がりも甚だしい!ああ、穴があったら入りたい!!」
ならスコップが必要ねと、くすっと戦場ヶ原がそこで小さく笑う。
戦場ヶ原が無表情の鉄仮面を装着している戦場ヶ原が笑みを見せるのは僕と二人きりのときだけだ。
鉄仮面を外しているときだけだ。
「実は太陽には私から言っておいたのよ」
と、なぜか自慢げに戦場ヶ原が言う。
「太陽の方を動かしているのか!?」
天動説か!
いや、宇宙は戦場ヶ原を中心にして回っているのではないか?
「私にはそんな大それた能力は持っていないわ。阿良々木くんに彗星を落とすぐらいかしらね」
「それ僕どころか地球もただではすまないんじゃないのか!!」
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