プロローグ 姫君とナイトと和菓子屋さん(3)
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
(3)
目の前では見ず知らずの男が、そう長くも無さそうな舌で、長広舌を振るっている………もうどれくらい経っただろうか。
「*****」
あぁ、目の前の男が誰かに向かって何かを言っている。
いいや、僕とこの男の他にこの公園には誰も居ないのだから、恐らくそれらの言葉は僕に向けて発せられているのだろう
………けれど動いている唇から漏れ出る音で意味を持つような代物は、こちらの耳にはちっとも入ってきやしない。
恐らく……いいやナンパか何かのつもりなのだろう
そうだとすればこの男の言っている内容なんて、所詮は中身のないお笑いのような、聞く価値さえもないことだろう。
そんなものをただ壊れたレコーダーのように繰り返している彼に賞賛の念など抱きそうだ。
いい加減目を逸らしたい心持ちだけれども、それで男が調子づいて腕でもつかまれたら嫌だ。
気色悪い。
……男は嫌いだ
所詮は表の一皮を剥いでしまえば、そこにあるのは軽薄で、間抜けな阿呆面と、解りやすい打算を醜悪にも滲ませている。
バレていないとでも思っているのであろうか。
……その目の奥に欲望を滲ませ、何事も自分の望むままにまかせ、相手に言うことを聞かせようと言う傲慢な態度も何もかも
……自分も嫌いだ。
まるですべてを上から見るような、そんな自分も……大嫌い。
嫌い、というレベルで考えるなら、自分も目の前の男にも…それほどに差はないはずだ。
……だからきっと人間そのものも嫌いなのだろう。
女の子が男の顔をぼぉっと眺めていると、その目の前の男の顔は紅潮していく。
……男の言葉は徐々に直接的な内容になり、異常なまでに熱を入れて口説き落とそうとしていることが傍目にも解った。
それにも関わらず、能面のように全くと言っていいほど表情を変えず、殊更ノーリアクションな女の子に、見当違いにも腹を立てているのだろうか
(誰も話し掛けて欲しいなんて、頼んでやしないって云うのに。)
そう女の子の表情が気だるげに主張している風にあたしには思えた。
「……っ!」
男の口が大きく、尖って見えたかと思うと、不満らしきものを喚き散らして……女の子の腕を掴んだ。
何の反応もしないというのなら、直接力任せにでも連れていこうとでも云うつもりだろうか。
「ちょっと!」
あたしは彼女の腕を掴んでいた男の腕を後ろから更に掴む。
「止めてあげたらどうなの?」
「はぁ?何なんだよ、何様のつもりだよ?」
男から女の子を引き離すために二人の間に割って入るように体を滑り込ませる。
「あんたこそ何様のつもりなの!この子、嫌がってるじゃない」
あたしは男をつかむ腕に軽く力を込める。
男は僅かに顔をしかめると、彼女から手を離してあたしに食いかかる。
ナンパ男としばらく言い合いになったが、あたし
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ