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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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いとしても、どうかこのまま連れて行って欲しい。思わず手を伸ばし――
「もう! 約束したでしょ。フェイトは、ママの帰りを待ってるよ」
 待っている訳がない。あの子には、それほどに酷い事をした。
「だからしっかり謝るの。悪い事をしたら、ちゃんと謝りなさいって言ったのはママでしょ?」
 腰に手を当て、精いっぱいに胸を張って――それは、いつかの私の真似をしているのだろう。その姿さえ薄れて――遠のいていく。
「大丈夫だよ。フェイトはちゃんと分かってるよ」
 何の心配もしていない。そう言わんばかりに、アリシアは笑った。
「ママは本当は優しい人なんだって」
 身体が浮遊感に包まれる――いや、落下しているのだろうか。分からない。けれど、娘から遠ざかっているのは分かった。
「さて、それでは私は本来の主の元に帰りますね」
 傍らのリニスまでが、遠のいていく。彼女だけが、本来の主――飼い主だったアリシアの元に向かっていく。この楽園から追放されるのは私だけだ。
「リニス!」
「プレシア、貴方にはまだやるべき事があるでしょう?」
 それでも手を伸ばす私に向かって、彼女は言った。
「いい加減、真面目にフェイトと向き合いなさい。それが、アリシアの望みでもあるんですよ?」
 今さらどんな顔をしてあの子の前に立てと言うのか。そんな事は、誰よりもリニスが分かっているはずだった。
「だから言っているんです。フェイトと向き合うこと。それができない限り――」
 それは、きっと大切な事だったはずだ。意味は分からなかったが、きっと。
「アリシアを迎えに来ても、追い返しますからね」
 その言葉を最後に――私が望んだ世界は静かに消え去った。




 何か、大切な夢を見ていたような気がする。
「待って!」
 自分の叫び声で、目が覚めた。飛び起きてから、身体が鉛のように重い事に気付いた。もう一度ベッドに倒れ込みそうになった時、
「起きたか。元気そうで何よりだ」
 そんな声が聞こえた。何とか踏みとどまったまま視線を動かすと、ベッドサイドには黒衣を纏った魔導師の姿があった。
「貴方は……」
「御神光。まぁ、好きに呼んでくれ」
 子どもらしからぬ無愛想さで、その少年――光は言った。そのまま、彼はベッドサイドに置かれていたリンゴに手を伸ばし、やや不器用に皮をむき始めた。不器用なのは慣れていないからではない。顔の半分を覆うように包帯が巻かれているから――いや、片目がないからだ。
「ここは?」
 その少年が右目を失った理由。それは、私のせいだ。あの異形の魔法を使ったのをうっすらとだが覚えている。今さらと言えば今さらだが――気まずさに耐えかね問いかける。訊くまでも無かったが、他に話題が思いつかなかった。
「管理局の船だ。アースラとか言ったかな」
 まぁ
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