魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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ったが。
「どんな試験なんですか?」
恐る恐ると言った様子で訊いてきたのはユーノだった。人間の姿になっても野生の勘は健在なのだろうか。なかなかいい勘をしている。
「二人一組で、指定された魔物を見つけ排除する事だ。それがまず第一段階となる」
「魔物をって……。それってもう試験じゃないんじゃないかい?」
呆れたように言ったのはアルフだった。
「それは間違いじゃないな。実際、試験の参加者の半数以上は死に至る」
そう答えてから、多分彼女の中に生じたであろう誤解を解く事にした。
「もっとも、いきなりそう凶悪な魔物の相手はさせないさ。魔物化して日が浅い、もしくはあまり狂暴ではない魔物が指定される。道中で下級魔物――人間以外の動物が転じた魔物を相手にそれなりに経験を積み、魔力を高めておけば何とかなる程度だ」
「それでも、半数が死亡するというのはさすがに……」
クロノが顔をしかめた。危険すぎると言いたいのだろうが……残念ながら、彼が考えている理由は正解ではない。試験はもっと過酷なものだ。
「最大の死因は魔物との交戦じゃあない。だからこそ、半数を下回る事は絶対にない」
「絶対にないだって?」
怪訝そうな顔で――そして、どことなく警戒した様子でアルフが首を傾げた。もっとも、他の連中も似たようなものだ。
「試験の第二段階。それは、旅を共にした同行者との殺し合いだ。それに生き残り、相手を生贄とした方がアヴァロンに正式に加入できる」
だから、生存者が半数を上回る事は絶対にあり得ない――告げると、全員の表情が凍りついた。多分、俺も初めてその記述を読んだ時はこんな顔をしていたのだろう。
「……何故そんな事を?」
しばらくして、リンディが努めて冷静さを保ちながら呻いた。
「さぁな。魔法使いから人間性を削り取るためか。あるいは、団結してロムルス帝国に反乱を起こす事を防止するためか……まぁ、そんなところじゃないか?」
あるいは、掟に――その後の戦いに対する覚悟を植え付けるためかも知れないが。もっとも、何と説明しても彼女達から同意を得ることは難しいだろう。実際のところ、俺自身も理解できるかと言われれば難しい。
ただ、情を通わせた人間を生贄とする事は、その後の殺人に対する抵抗を削ぎ落とすのは間違いない。それに関しては、恩師とその相棒を生贄とした俺も例外ではなかった。
「今さら言うまでも無い事だろうが……恩師はその試験に合格した」
ともあれ、今必要なのは理解を得る事ではない。説明を先に進める事にした。
「殺戮衝動は、その際に被った代償だ。本来の持ち主は彼の相棒だった」
小さくため息をつく。彼女の事を思い出すのは、少しだけ気が重い。彼女の姿を思い起こせば起こすほど、胸が引き裂かれるような痛みを覚える。それは恩師の感情だと分かっている
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