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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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たと思ってる?」
「まだ二日目よ」
「二日もあれば充分だ。堕ちるならとっくに堕ちている」
 つまり、殺戮衝動は完全に鎮静化したという事だ。一時は随分と焦らせてくれたが、どうにか解消できたらしい。
「なら、その『魔物』について詳しく話してもらえるかしら? ジュエルシードの脅威が取り除かれた以上、第九七管理外世界に残された脅威はその『魔物』だけだもの。念には念を入れておきたいのよ」
 なるほど、そう来たか――言葉にしないまま、それでも皮肉たっぷりに呟く。さすがに場馴れしているだけあって、実に面倒な方向に話を誘導してくれる。
「別に『魔物』ってわけじゃあないんだけどな」
 確かに、『魔物』の魂とも縁がない訳ではない。純粋な魂という訳ではないが、それこそ世界を蹂躙できるほど凶悪な代物を宿している程だが……殺戮衝動の原因となったのは、間違いなく人間の魂である。それを『魔物』などと言われるのは心外だ。しかし、その誤解を解こうと思うなら――
(さて。どこから説明するか)
 さらに重要な事として、どこまで説明するべきか。何せ、事は俺の素性――つまり、何故俺が不死の怪物となったのかにも関わってくる。つまり、『奴ら』についても話さなければならない。
(連中は消滅した訳じゃあないからな。切っ掛けがあればいつでも姿を現す)
『奴ら』がこの世界に介入できないのは、自分という『楔』が存在するからに過ぎない。幸い『器』が変わっても『楔』の力そのものは弱っていないようだが……それとて完全無欠の力などではない。『世界』が大きく揺らがされれば、その隙間を縫って『奴ら』は入り込んでくる。そういう意味では、今回の一件はかなり危なかった。何せプレシアがあの魔石を従えていた――世界が引き裂かれかけたあの瞬間、ほんの僅かだが確かに『奴ら』の気配を感じたのだから。
「……かつて、俺の恩師が生きていた世界には、魔法使いによって構成される組織が三つあった。生贄を掟とする秘密結社アヴァロン。救済こそ正義だとする信仰組織サンクチュアリ。そして、その選択を拒むグリム教団。この中で、恩師はアヴァロンに所属する魔法
使いだった」
「生贄を掟とする?」
 首を傾げたのはリンディだった。どうやら、そこから説明しなければならないらしい。いや、単なる確認か。なのは経由で多少はこちらについて知っているはずだ。
「恩師の故郷では魔物化――つまり、プレシア女史の身体に起こったような変化が身近なものだったんだ。その脅威は今さら言うまでも無いだろう。それに対応できるのは魔法使いだけだった。倫理的にも、能力的にも」
 そこでいったん言葉を切り、反応を待つ。全く事情を聞いていないなら、倫理的という意味も理解できまい。だが、それに対する質問はなかった。やはりある程度は聞いているらしい。念のため視線でなのは達に
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