魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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い理由?」
「別にお前達のお膝元では生活したくないと言ったのは俺じゃあないんだがな」
誓って俺が唆した訳ではないのだが――テスタロッサ親子は、裁判が終了次第……身柄の自由が保障され次第、海鳴市に越してくるつもりであるらしい。戸籍云々は義姉か士郎辺りに任せればいいだろう。それに、確かに俺にとってもある意味では都合がいいというのも事実だ。だが、それ以前に、
(まぁ……そうだな)
もう一人の可愛い妹分の成長が傍で見られるというのは、この上ない幸運だった。
「まぁ、それはそうなのだけどね」
肩をすくめるリンディから、プレシアが気まずそうに視線を逸らした。彼女が娘を失う事になった――さらに全責任を押し付けられた件の事故については、リンディが再び探りなおしているらしい。まぁ、プレシアが勤めていた会社は管理局の上層部とも付き合いが深く、さらにミッドのお偉方の隠居先――最近覚えた言葉で表現するなら、天下り先の一つでもあるらしい。それを聞くだけで叩けば叩くだけ色々と埃が出てくる事は疑いない。
ついでに、間接的にとはいえ、ある意味では娘を殺した張本人どもが幅を利かせているような場所には帰りたくない。そんなプレシアの気持ちが今さら分からない訳もない。
ちなみに、フェイトもアルフも海鳴市に越してくる事に特に不満はないようだ。このまま滞りなく話が進めば、近いうちに近所が少しだけ華やかで賑やかになるだろう。
それに関して、俺がとやかく言う事は何もない。むしろ、禁術を三回も使ってようや 救い出した彼女達を得体の知れない組織にかすめ取られる方が心外だ。
(もっとも、彼女達こそが管理局が介入してくる切っ掛けになりかねないんだが……)
リンディやクロノに関して言えば、多少は信用していいと思っている。だが、管理局全体を信用する気にはどうしてもなれなかった。理由は自分でもよく分からないが――そもそも俺自身が『組織』というものにロクな印象を持っていないからだろう。だから、彼女達の身を管理局に預けておくにはどうにも不安が残る。ここまでやって最後の詰めを誤るのも間の抜けた話だ。やるなら徹底的に。最も安心できる形でケリをつける。
「それにしても、病気を治すどころか若返らせるなんて、一体どんな魔法を使ったの?」
「何だ。若返りに興味があるのか?」
「それはもちろん。女性にとって若返りは共通の夢よ?」
冗談交じりにリンディは言った……が、それは申し訳ない。その夢は随分と前から何度も叶えている。もっとも、そんな事を言ったが最後、余計面倒な事になるのは明確だった。ここは敢てこの女が訊きたいであろう事を素直に答えてやるべきか。
「プレシア・テスタロッサ女史が『違法研究』に着手した――いや、アリシア・テスタロッサが死亡した事故が何年前に起こったかは知っているだろう?」
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