魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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興させたサンクチュアリに対する信頼は今も揺らがぬものだったが、それでも反発は強かった。その頃には難民の何割か――特に元軍人達が集まり、小規模なロムルス領を構築。皇帝の遺志を受け継ぐという名目で周囲との小競り合い起こしていたという事もある。それに、誰も彼もがエレイン――二代目ゴルロイスのような悟りを開ける訳ではない。誰もが過酷な赦しではなく、安易な狂気へと逃げ込んでいた。その時の自分もそれは変わらなかった。そして、その安易な世界の中に留まれば留まるほど、自分の中で何かが摩耗して行ったように思う。
そんな世界の終わりは、思いのほか呆気なくやってきた。切っ掛けとなったのは摩耗した同類と、とある泣き虫との出会いである。過酷な環境の中で摩耗し、名前しか覚えていない、元奴隷の少年。そいつは泣き虫だったが、魔法使いとしての素質は高かった。別にだからという訳ではないが、自分はその少年を引き取り、養育する事になる。その少年に酷く懐かれたという事もあるが――結局のところ、この少年を救う事で自分が救われたかったのだろう。あとで振り返ればそう思わずにはいられない。
同類――延々と続く殺し合いに摩耗しきったロムルス人の女傭兵。自分に殺してもらうために、わざわざやってきたそいつも似たような事を考えたのかもしれないし、そうではないのかもしれない。何にしても……どんな運命の皮肉なのか、その女は後にその少年と結ばれる事になる。それまでの道のりはお世辞にも平穏なものとは言えなかったが――幸せそうな二人を見て、確かに自分は救われた。今の自分があるのは、あの二人のおかげだと。そう思う。
どれほど深い闇でも、光が差し込んでしまえば瞬く間に消えうせる。その光は小さくとても弱々しい。そして、どんな形で自分の前に現れるかも分からない。それでもその灯は必ずどこかにある。必ず見つけ出せる。……その光に背を向け、自ら闇の奥まで逃げ込もうとしない限りは。
2
「目が覚めましたか?」
その言葉で、意識が覚醒した。いや、覚醒したというのは正しくはないのかもしれない。お世辞にも意識がはっきりしたとは言い難かった。
それでも、その声の主が誰なのかくらいは理解できていた。
「リニス……」
ほんの少し前までは、当たり前のように傍にいた存在。アリシアが可愛がっていた山猫の亡骸を寄り代に生み出し――そして使い捨てた私の使い魔。
「わざわざ迎えに来てくれたのかしら?」
ここがあの世というやつなのだろう。信じてもいなかったが……今さらそれを受け入れない理由も思いつかなかった。すでに消滅した彼女に膝枕された状態で、どうやって否定しろと言うのか。幽霊にも足があるのか、なんてどうでもいい事すら考えていた。
「馬鹿な事を。今さら貴方なんて誰が迎えに来るものですか」
ここまで面と向かって毒
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