コヨミフェイル
003
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て、苛政は虎よりも武」
「合っているが、武って誰だ!」
ちなみに正解は苛政は虎よりも猛しだ。
「そしてそしてそして、世故に健」
「又しても合っているには合っているが、健って誰だ!」
ちなみに正解は世故に長けるだ。
「つまり、最後に人名っぽいのが入っている故事成語が何気に多いってことですね」
「絶対に先人はそんなことを意識してないだろうけどな」
苛政は虎よりも猛しに至っては中国の経典から出典された故事成語だろ。
確か中国の御偉い思想家が身内を虎に食い尽くされたのにも拘わらず土地に留まる女性に、なぜ土地を離れないのかと尋ねると、それでもこの土地には酷い政治がないと答えたという故事からだったよな。
受験勉強の賜物と言いたいところだったが、肝心の思想家の名前が思い出せなかった。
「わかりませんよ、阿良々木さん。もしかしたら遠い未来にこうして話のネタにしてくれていることを予期して作ったのかもしれませんよ」
「いや、それは万が一にもねえよ。成語として使われることも予期してないかもしれないんだぞ」
況んや日本人名っぽいのが含まれていることで話のネタにされることなんて言うに及ばずだろう。
「ですけど、故事成語は現代風に言えば、流行語ですからね」
「流行語……」
「そうです。故事成語は言葉なのですから当然自然発生したわけではありません。世間に受け入れられようになって初めて成語となり、長い年月を経て故事成語となるのですよ。どんな高い地位の人が成語を作ってそれを使うことを奨励しても、受け入れられなければ、定着はしません。流行に乗らなければ定着はしません」
「確かにそうだな」
一人で使っていても何百年も残るわけがないしな。
とは言っても、近来は死語が多くなっているからな、今まで残っていた故事成語の寿命も近いのかもしれない。
「ですから私は先人は世間に定着するまで、現代の芸能人がするように、耳にタコができるほど行く先々で言っていたのではと推測します」
「……それは……ないと思うけどな」
先人の尊厳が少女の勝手なイメージによって泥を塗られている。目上を大切にしない現代っ子の象徴だろう。
「だって『チョー、有り得ないんですけど〜』と『チョー、霞に千鳥なんですけど〜』って雰囲気が似てません?」
「『チョー、有り得ないんですけど〜』が流行語なのかも、『チョー、霞に千鳥なんですど〜』が故事成語なのかも怪しいが、雰囲気が似てると言えば似てる」
先人がそんな崩れた言葉遣いをするのかは抜きにしてだけど。
「まあ、つまり、阿良々木さん」
と、そこで八九寺。
「故事成語は流行語なのです」
「無理矢理だな」
結論に至るまでの過程をいくつかすっ飛ばしているだろ。
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