コヨミフェイル
003
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外は茹だるような暑さだった。
八月も終わりが見えてきというにも拘わらず、猛烈な暑さは衰えを見せない。ほぼ真上に上った太陽から燦燦と降り注ぐ大量の太陽光を吸収してアスファルトは鉄板のように熱くなり、反射熱を絶え間無く放射していた。
自転車を走らせている間は風に熱を奪われて体温を維持できているが、一度信号に捕まって停止すると、一気に全身から汗が吹き出して不快感を覚えさせる。顔に引っ切りなしに垂れてくる汗を拭う度に苛立ちが募った。髪を伸ばしている所為で暑苦しさも一入だ。
日本はいつから熱帯に属すようになったんだ。
ファイヤーシスターズの仕業だったら、僕は迷わず二人を地球外追放するだろう。……あいつらなら生きて帰ってきそうだ。片方は不死身だしな…………これは失言だったか。
そんなことをたらたらと愚痴って遠くのアスファルトの表面に揺らめく陽炎を怨みがましい眼差しで睨み据えていると、見つけてしまった。
二十メートル先に小さな体躯に似合わぬ大きなリュックサックを上下左右に揺らし、大きな弧を描いて垂れ下がっているツインテールという名の触角をぴょこぴょこさせながら歩く小学生八九寺真宵を。いつもと変わらず、真夏の太陽の日差しをまるで苦にもしていないようにキョロキョロしながら歩みを進めていた。
今では吸血鬼の成れの果て、吸血鬼の絞り滓の元最強の怪異にして怪異殺しの忍が僕の影にいて、吸血鬼性が濃くなったり薄くなったりするバイオリズムが僕の中で形成されつつあり、今は比較的濃い時期だから視力と共に身体能力が向上している。
だから、何だというのだ。
八九寺を見つけやすくなった?
はっ、僕は別に八九寺がそれほど好きだというわけではないし、というか彼女いるし。ましてや通学途中にあの見るからに愛くる……生意気そうな八九寺に話し掛ける必要性に僕は迫られてはいない。
ならばここは、赤の他人のように知らんぷりを決め込んで、さも何事もなかったように通り過ぎて、学校に急ぐべきだろう。早く着けば、それだけ学生の本分であるところの勉強に励むことが出来るというものだ。
そうだな。そうしよう。
信号が青に変わると同時に気付かれないように静かに自転車を始動させた。碌に吹けもしない口笛を吹きながら、八九寺まで後十メートルのところまで詰めていき、未だ身に迫っている魔の手(?)に気付かず、キョロキョロしている八九寺に胸が締め付けられような感覚に陥りながらも首を振って邪念を振り払ってから手慣れたように静かに自転車を下り、無音殺法術の使い手宜しく無音でスタンドを立てて、手際よく自転車を道の脇に止めて、音を立てないように細心の注意を払いながら早足で残りの距離を詰めていき、射程距離に八九寺を捕らえると、後ろから思いっ切り抱き着いた。
「はああああああああああ
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