コヨミフェイル
002
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主が殺されるのは決まって虐げてきた市民によってである。
僕のこの状況は言わば君主が市民に追い込まれた状況なのである。自業自得と言えば、自業自得である。
と、そんなことを暗転する視界とともに薄れゆく意識でうつらうつらと考えている間に月火は僕のポケットをまさぐって、携帯を奪取していた。
「火憐ちゃん、もういいよ」
月火が携帯をしばらく操作してから言った。
火憐によると、部屋の温度が氷点下に達するではないかと思うぐらいに月火の声は殺気を孕んでいたらしいが、意識が消えかけている僕にはそれがただの雑音にしか聞こえていなかった。
「お、おう」
しかし、火憐はそのただならぬ気配を察知してすぐに僕を解放して離れた。
「がはっ、かはっ。は〜っかはっごほっ」
唐突に息ができるようになって肺に空気を取り込もうとする生存本能のままに空気を吸い込もうとして思わず咳込んでいた。
落とされかけただけあって、意識がまだはっきりしないし、視界もぼやけている。
「お兄ちゃん、もう私たちが必要ないんだね」
徐々に視界は回復しているようであるが、未だにぼやける視界の中を月火を探して視線を泳がせたものの見つけられたものは中に浮く月火の着ていた浴衣と同色のようであるシミとその上に浮く月火の黒髪と同色のシミだけだった。
「どういうことだよ。いつ僕がそんなことを言った?」
ボーッとする意識の中慎重に言葉を選んでそれを紡いだ。
この状態で襲われたら一溜まりもない。
「だって、携帯のアラームを使っていないということは自分で目覚ましなしで起きたってことでしょ」
「あん?」
アラームを使っていない?
いや、使ってるはずだ。目覚ましなしで僕が起きれるわけがない。
じゃあ、どういうことだ。
「惚けないで!」
思考を月火のヒステリーを起こしたような声に阻まれた。
「何を惚けるってんだよ!」
「いつから一人でも起きれるようになったのよ!?」
「起きれてねえよ!」
「起きてるじゃん!?」
「今日は……たまたまだ!」
「つまり、いつかは私たちが不要になるってことじゃん!」
要するにヒステリーになってる妹は今まで全く一人で起きられなかった僕がたまたま起きられるようになったということは、つまりいつかは人の手を借りずに起きられるようになっている前触れでそのいつかの日に自分達がお役御免になると言いたいのだろう。
「マジか!!あたし達御祓い箱にされるのか!」
「ややこしくなるからお前は引っ込んでろ!それとお前等が僕を起こせなくなったら何が困るんだ?僕を起こす必要がなくなるんだぞ?」
そんでもって僕より早く起きる必要がなくなるんだぜ?
「お兄ちゃんはいいの、それで?家族との繋がりがなくなるんだよ?」
「
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