暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
002
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ゃんには選択権はないんだよ」
 そう言って手を差し出す月火。
 ここで渡せば、この場は切り抜けられるだろうが、携帯のアラームのログを見られた暁には携帯がいつかの目覚まし時計みたくスクラップにされただけでは収まらず、僕までもスクラップにされ兼ねない。
 だからと言って出さなかったらこの場で処刑だ。
 正義の断罪をされる。
 どっちに転んでも死しか待っていない。
 どうすればいい。どうすればいい。どうすればいい。どうすればいい。どうすればいい。どうすればいい。どうすればいい。
 「火憐ちゃん、お兄ちゃんを押さえていて」
 「ラジャー」
 脳を今までにないほどに回転させていたが、二人の強行策に敢なく阻まれた。
 火憐に一瞬で背後を取れられて、首を両腕で締め上げられた。というか、チョークスリーパーだった。
 かの怪異の王として名高いキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードは不死に究極的に近い治癒力を持っているが、弱点がないわけではないのだ。日光、大蒜、十字架、杭は勿論で、それに加えて毒は効くし、内蔵を潰されれば、治癒するまで機能はしない。
 だから締め技はかなり有効なのだ。傷つけられているわけではないので治癒力も用をなさないし、落とされれば、気絶もする。
 しかも此奴(こいつ)首が(ねじ)切れそうなほどの力で締め上げてやがる。気道潰しどころの騒ぎじゃねえ。
 以前に捩り上げた僕の腕を足で搦め捕るようにしながら、改めて自らの両腕で、僕の首を締め上げる、火憐曰(いわ)く「チョークスリーパーX」なる横文字の空手の技を掛けられたことがあるが、そのときは火憐の体調が思わしくなくてまるで極まっていなかったから、完全体のときにはこれほどまでに苦しいのかと思い知らされていた。
 「これが本当のチョークスリーパーXだっ!!」
 「チョークスリーパーXに本当も糞もねえよ!ていうか、離せ!ギブギブギブギブギブギブ」
 腕が首に減り込んできていて火憐の腰辺りを何度もタップしたが、まったく解放してくれそうもなかった。月火に殺される前に火憐に殺される。
 「まじで……や、めろ……」
 やべえ。視界が明滅しはじめやがった。
 体に力が入らねえ。
 チクショ…………僕はここまでなのか?
 なんで妹二人から命を狙われているんだろう?兄の命を奪おうとするなんて、僕の妹達はいつから正義の道を踏み外すしてしまったんだ?
 いや、最初から踏み外していたのか。
 僕が妹達の歪んだ正義を芽生えさせたときからか。
 火憐は僕の暴力によって火憐は正義に目覚めたらしい。ならば、火憐や月火がこんな風に育ったのは僕の所為である。そして、その正義により僕が罰せられようとしている。
 これは悪が滅ぶ一番多いパターンではなかろうか。
 圧政を推し進めていた君
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