コヨミフェイル
002
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撫で下ろすより先に怒声を上げた。
「惚けるからでしょ!!」
切れていた。
さっきまではしゃいでいたのが嘘のようだ。
ちゃっかり惚けていることもばれてるし。
「言っておくが、僕は行くことができないからな!」
「どうせ暇でしょ!」
「この制服が目に入らないのかっ!!」
これは少しセンスを疑われそうな台詞だが、月火のヒステリックに当てられて僕もハイになっていた。センスを利かすほど頭が冷えてなかった。これを鑑みるに僕はそれほどクールではないのかもしれない。僕の初期設定がニヒルでクールぶっている奴だったはずだが、それが光陰矢の如く崩れ去ったのはその所為なのかも知れないな。火憐の首を何度か絞めたことがあるらしい。もしかしたら月火のヒステリックは実は僕の影響かもしれない。
「見えない見えない見えなっいー!!」
月火が手足をじたばたさせている隣で火憐は
「ははー」
平身低頭していた。
もうこうなると手がつけられない。馬鹿とヒステリックの二重苦だ。戯言と金切り声の二重奏だ。
「もう、わかったわかった。わかったから」
降参の意を表して両手を上げた。ハンズアップの姿勢である。
此奴等と付き合っていたら日が暮れてしまいそうだ。ここは適当に話を合わせて、やり過ごすしかない。
「来てくれるのか!!」
火憐が下げていた頭を音が聞こえてきそうなほどの勢いで上げた。
目がすっげえキラキラしてる。
…………罪悪感半端ねえな。
だけど、今日は、というか今日も学校の後に大事な用事があるんだ。
「時間があったらな」
「そう言ってどうせ来ないつもりでしょ」
いつの間にかヒステリックが収まっている月火が疑いの眼差しで僕を見ていた。
ちっ、目敏い奴め。
「何を言っているんだ。僕が約束を違ったことがあるのか?」
「うん、そうだ。兄ちゃんは私の誇りだ」
「…………」
鳥のような脳しか持っていない火憐は頷いていたが、月火はただ黙って僕を睨みつけていた。
「せんちゃん喜ぶと思うんだけどな」
「そうか?どっちかって言うと、迷惑だろ」
呼んでもない人が来ても困るだけだろう。
しかもその相手が千石だと、無口というか内気だから嫌でも我慢するだろうと思うと、更に行きたくなくなる。
「…………」
月火は未だ僕を睨みつけながら黙り込んだ。
と、思えば
「まあ、男女間の友情だもんね」
と、意味深にぼそっと言って、黙々と朝食の食パンを口に運びはじめた。
「どういうことだよ」
「知・ら・な・い」
一句一句途切れさせて怒気を顕にして言った。キレる一歩手前だ。引かないと次は何が飛んでくるかわかったものじゃない。兄の威厳も大事だが、ここで妹の言いなりになるのも大人の振る舞という
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