コヨミフェイル
002
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からないのに、最期に妹に命を奪われたなんて色んな意味で笑えない冗談である。
というわけで、僕は、八月十六日、水曜日の朝、自衛手段に打って出た。
簡単に言えば、自衛手段。
詳しく言えば、昨夜唐突に身の危険を察知した僕は起きたことを気取られないように初めて使うことになった携帯のアラーム機能で朝の五時にバイブするようにセットした。
五時に目覚めた僕は掛け布団の端を掴んでスタンバっていたのだ。気取られないためでは勿論あるが、携帯をスクラップにされたくないので起きられるか不安を覚えつつバイブと設定したが、杞憂のようだった。
だがしかし、このとき僕は昨夜の僕がこの作戦を立てたことを恨むことになった。
これから人間兵器のような妹と一戦交えるというのに僕はその先に睡魔と静かな激闘を繰り広げる羽目になったのだ。
僕は温かな布団の中というフィールドで上方補正された睡魔の攻撃力を考慮に入れていなかった。布団なんて睡魔の独壇場だとすぐに思い当たりそうなものであるにも拘わらずだ。
あまりにも思慮が浅かった。元よりこの作戦もふと昨夜思い付いたもので、シュミレートをしていなかった。ぶっつけ本番である。シュミレートしていれば、この欠陥にはすぐに気づけただろう。
だが、悔やんでいても仕方がない。既に状況開始していた。後戻りは叶わないし、別の作戦を立てている時間も無論なかった。
ただただ妹共を待った。
皮肉かな。このときより彼奴等に早く来てほしいと思うことはなかった。
そして、待つこと一時間、つまり六時に差し掛かったそのときだった。
「お兄ちゃん!朝だよっ!!」
「兄ちゃん!!朝だぞっ!起きろー」
二人の妹が例によって例の如く、扉を勢いよく開け放って僕の部屋を強襲してきた。耳を擘ざく二人の声とともに僕の布団が引きちぎらんばかりの力で引っ張られた。布団の端を掴んでいた僕も連動してベッドの上を転がった。余りにも余りある回転速度に血が遠心力で体の末端に流れて意識がブラックアウトしかけたが、頬っぺたの裏側を反射的に噛んで意識を保った。睡魔に襲われる度に噛んでいて、既にもう歯型だらけだった。
しかし、こんな苦痛も自分の命を思えば瑣末ごとだ。
体が一回転しないうちに、ベッドから転落しないうちに布団を離し、片腕を伸ばして回転運動によって僕の体に加わった力と今までの恨みつらみを乗せた裏拳を放った。
この作戦は僕の布団が引っ張られることと僕が回転運動によって裏拳を放った場所に攻撃対象がいることが前提の、今思えば成功確率があるのかどうかも疑わしげなものだったのだが、幸いにも裏拳の軌道上にでっかいの方の妹、火憐の顔面があった。
ここで何故僕の背丈を優に越す火憐の顔面がたかが八十センチにも満たないベッドの高さと僕の肩幅と腕を
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