偏に、彼に祝福を。
第二章
九話 今年の熱さ
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を選びます。生きていれば、達也はきっと私の側にいる。それはとても嬉しい。けど、駄目。これからもプロデュースを続けて欲しいから。私にしてくれたみたいに色々な子に夢を見させてあげて欲しい。約束だったよね、プロデューサー続けるって。
私は、幸せだった。二人と一緒に遊んで、バレリーナにはなれなかったけどアイドルという凄く楽しい職業に就けた。とても、短い間だったけど。だから何も後悔はないよ。これから苦痛と自己嫌悪で過ごすだろう数年より、他の女の子へ夢を繋ぐ行為をする。それが貴方に対する呪いだとしても。ただ、忘れないで。きっと、後のアイドルの誰かはきっと貴方を祝福する。
最後に、この手紙を誰にも教えないで。私を、唯の事故死にして。誰にも打ち明けず素知らぬ振りを貫いて。私を自殺者ではなく、志半ばで不幸に至った女性にして。そうしたほうがきっと、後のアイドルには都合がいい』
私はその手紙を読み終わると同時に、それをまたシート下に戻して九十九里に急いだ。手紙にある通りの場所に、冷たくなった彼女の遺体があった。彼女の側にはバッグに入る小さな三脚と、ウィスキーの小さなボトル。そうして小さな猫をモチーフにしたであろうキーホルダーが落ちていた。
「あぁ……」
暑さで、眼が覚めた。暗く、ごーと云う音が聞こえている。其れに、何か重たいものが体に乗っている。汗をかいているせいで、その何かと触れ合っている素肌の部分が気持ちが悪い。
体を動かそうとすると、酷い頭痛が襲ってきた。そのせいで、睡眠前の記憶が呼び戻された。そうだ、私は自殺を成し遂げたのだ。ならばここは地獄だろうか? 何て、酷く間抜けた事を一瞬考えた。本気で地獄なんて信じていないのだから、生きているという考えのほうがずっと建設的だ。だが、生憎寝た時は満天の星空の元だ。こんな暗くて暑い場所ではない。私は何とか体を起こそうとするが、力が入らないし、頭痛のせいでそれは叶わなかった。
「くそ、重い……」
小さく声を漏らす。できることと言えば口を動かすこと程度なのだ。普段零さぬ独り言も出てしまう。
「ん?」
何か聞こえた。それはか細くて掠れていて、酷く聞き取りづらかったが、何か怒っているような「ん?」だった。
上に乗っかっていた何かが動く。それはぐわっと私の上半身から離れた。
「目が覚めたか」
離れた事によって、それが何かわかった。麗さんだ。暗くて分かり難いが、肩が素肌であることに気づいた。働かぬ頭で、何でそんなことになっているのか気になって視線を下げると、これまた素肌の腹部が見えた。そこで、随分と眠気が吹っ飛んだ。
「麗さ―――」
「良かった」
彼女は私にのしかかった。今度はそれに留まらず、寝転がったままの私に腕を回し、固く抱きしめた。そこで、私ははっきりと理解した。私は見つか
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