偏に、彼に祝福を。
第二章
七話 勝敗
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明さんと慶さんが居間のソファーに座り、聖さんが連絡を受けた場所をリストから消していく作業をしていた。
携帯が鳴る。見れば麗さんからだった。今のところ、一番有力な情報主だ。私は通話ボタンを押した。
「駄目だ、居ない。もう別の場所に行ったのか……」
「足湯で見たという人が、達也さんではないこともありえます。殆どの場所を見たのなら、次のリストアップした場所に」
そこまで言った時、ぼそっと、明さんが言葉を零した。それは恐らく無意識になのだろう。彼女の目は長時間の緊張からか、力がなかった。
「懐かしいな、あの足湯」
麗さんにちょっと待って下さいと伝え、私は明さんに尋ねた。
「旅館の側の足湯に何かあったのですか?」
尋ねられた明さんははっとした様子で私を見た。ぼぅっとしていたのだろう。
「あ、ああ。皆で旅行に行った時の二日目だったかな、早朝ランニングしていた後に、達也さんとゆかりと一緒にあの足湯に入ったの」
「何か、他にありましたか?」
「いや、特に……ただ、彼はここが初めてじゃなくて、一度友人と来たことがあるとは言ったよ」
「他には?」
「あ、えっと」
彼女は瞬きを繰り返しながら顎に手を添えていた。
「何も……肇さんに、釣りの場所を紹介しようかな、って言ってたくらい。場所は、えっと、ゆ、ゆ……」
私はソファーから跳ね起きて明さんの部屋に入るとPCの前に立ち、ブラウザのアドレス欄に中禅寺湖と入れエンターキーを叩いた。検索結果の、中禅寺湖の地図をクリックしてブラウザを最大化した。マウスホイールで地図を縮小する。中禅寺湖付近に数個の湖があった。恐らくそのどれかが釣りのスポットだろう。
有名な五色沼が目に入る。だが探すのはゆから始まる場所だ。私は五色沼の東に位置する湖を拡大した。湯の湖という文字が、そこに表示された。
居間に戻って明さんに湯の湖であるか確認する。たしかその名前だったと彼女は答えた。私はまたPCの前に向かい、中禅寺湖から湯の湖への道を調べた。
「おまたせしました。麗さん、今何処ですか?」
「中禅寺湖の畔だ」
「国道百二十号線を北西方向に進んだ先に、湯の湖という場所があります。達也さんは以前そこに友人たちと行ったことがあるそうなんです。一応ということもあります。向かってください」
「了解」
通話の切れた携帯を握って、私はまた居間に戻った。私は勝手にキッチンに入って、カップに水を注いで飲んだ。一度飲んでしまえば乾いた喉は次を欲しがり、何杯も飲んだ。
ひとまず満足した私は、居間に残る三人に何か飲みたいものがあるか尋ねた。明さんが代わりにするという提案を断り、三人分の飲み物を作った。結局、最後まで私は体を動かさなかったんだな、なんて思いながら。
湯気立つ緑茶を眺めながら、ぼぅっとしていると携帯が鳴っ
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