暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
[9/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、万の言葉以上に大きな勇気を与えてくれるものであった。

(・・・勝機は、ある)

 慧卓はぎゅっと柄を握り締めて、ゆっくりと息を吐き出していく。血に濡れつつも迷いの無い黒き視線は、男の鉄面皮を睨んで話さなかった。

「・・・ふぅ・・・」
「・・・大丈夫ですか?あの、血が結構出ていますよ」
「頭を切ればそりゃ出ますって。・・・パウリナさん」
「は、はい!」
「ちょっと無茶をしますから、援護の程、宜しくお願いします」
「えっ!?そ、それってーーー」

 慧卓は勢い良く正面から突進していき、下段に構えていた剣を逆袈裟に振り上げる。男は突きを打つように下方に剣を出してそれを防ぐと、それを待っていたかのように慧卓が男の剣を踏みつけて切っ先を石壁との間に挟み込んだ。男がそれを引き抜くよりも前に、慧卓の兜割りが男に向かって注がれていく。

「あああああああっっっ!!!」

 男はその鋭敏な本能によってか千切れかけた左手を目前に構える事に成功し、そして為されるがままにその腕を裁断された。赤黒い血肉と共に篭手の着いた手が落ちる。そして慧卓は素早く剣を閃かせ、男の左膝裏をざっくりと切り裂いて赤い血潮を噴出させた。

「カハっ・・・」

 遂に無反応の顔を貼り付けていた男から息が毀れ出た。筋まで切れたか、男の左膝が地面に屈する。更に返す剣で慧卓は男の顔面を薙ごうとするも、剣を手放した男の右手がそれを阻む。鉄の篭手に正面からぶち当たり歪な金属音が奏でられ、男は剣の刃をがっしりと掴み取った。慧卓がそれを引き抜こうとするも全く身動ぎする事が無い。一時の均衡が両者の動きを拘束した。慧卓はパウリナへと視線をやる。

「パウリナさんっ、とどめをーーー」

 その無防備な横顔を男の靴底が蹴飛ばした。蹴りといっても、鉄製のグリーヴによるものである。顔面が横合いから大いに揺さぶられ、二撃目が諸に顎に入った時、慧卓は意識をぐらぐらと混沌とさせて後ろのめりとなり、その両手が剣から離れてしまった。

(まずっ・・・!!!)

 奪い取った剣を回転させて男は柄を握り、上段に勢い良く振り翳す。そのまま切り下ろそうと力を込めた瞬間、裂帛の気迫が一気に近寄ってきた。

「うああああああっ!!!」

 我武者羅に剣を翳されたパウリナの剣が、向こう見ずの力を伴って振り下ろされる。男は態勢を崩した状態でありつつも右腕一本で剣を翳してそれを受け止めようとする。而して助走と身体全体の力が篭ったパウリナの一刀は男の剣を弾き飛ばし、返す剣で男の両眼を切り裂いた。
 
(や、やった・・・)

 パウリナが喜ぶも束の間、男は深い裂傷を負った顔面を彼女に向けて、右脚に力を込めて獣のように飛び掛った。伸ばされた右腕がパウリナの顔面を掴み取り、その鉄の重みに任
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ