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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
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 俺は奴等と共に帰還して、疲労のために数刻寝込んだ。そしてその後に研究室に行ったんだ。戸口を開いた瞬間、今まで嗅いだものを遥かに凌ぐ、濃厚な血の臭いが身体を包んだ。そして室内に広がる光景に言葉を失った。

『・・・これハ、ナンダ?』
『おかえり、ビーラ。・・・ああ、随分と憔悴した表情だ。余程辛い目にあったのだろう?ほら、君の好きな虫漬けの麦酒だ』
『・・・マティウス、彼らハ俺と一緒ニ・・・』
『ん?・・・おお、そうだったそうだった、これは彼らだったんだ。原型が変わってしまったからすっかり忘れそうになっていたよ。ほら、随分と綺麗に仕上がったろう?特にこの部分、骨同士が噛み合ったところなんだが、此処は特に気合を入れて作ったんだ。・・・理論上では、これでもまだ失敗作の部類に入るんだが、それでも満足出来る一品さ』

 昔学院の図書館で見た事があったよな、紅牙大陸に古くから住み着く魔人の恐ろしさを語った絵本、『鳥達の啄ばみ』を。あれに出て来た魔獣、『インカルナティオ』にそっくりの風貌をした肉塊が手術台に転がっていた。・・・悪夢のような光景だったよ。
 本の記述通りに頭からは何本もの手が生えていた。虫のような拳大の複眼が二つ、神経の糸を伝って胸部から伸びていて、胸部から臀部が異様に肥えていた。その身体を支えるように細い足が何本も生えている。記述と違うのは、身体の彼方此方に鋼の糸が縫合されて部品のように身体を繋ぎとめていた事、そして身体全体が真紅に染まって肥大化していた事だ。そりゃそうだ、その『インカルナティオ』は私兵達の血肉を材料に作られたんだから。

『矢張り、傭兵を信用するものではなかったね。私の研究に色目を使って脅してきたんだ、命が惜しくば全ての財貨をよこせって。胸糞の悪い気分に陥った私は、正当防衛を働いた』
『ソレがこの結果だト?』
『そうだ。何を不思議に思っている?私は不要となった人体の再利用という、魔術の究極の目標の一つを成し遂げようとしたんだ。それがどのような形に帰結するにしろ、魔術の発展に大いに貢献する事は間違いない。とりわけ、死霊術にはね』
『・・・お前、何を考えテいる?』
『召還魔法の更なる発展だよ。死霊術は単にその体系に属しているに過ぎない、いわばただの手段さ。教会や学院が禁じているとはいえ、その有用性は他の魔術を遥かに上回るものであると確信している。或いは不老不死に最も近き魔術であるやもしれない。実効性は兎も角として、実に浪漫のそそる話だ、倫理に対する背徳感もあるから止められない。
 彼らは其の為の・・・いわば必要犠牲さ。社会的に疎まれる人間が犠牲となるならば、思考の次元が劣った皆もまた、喜びの声を上げるだろうね』

 恐ろしかった。私兵の首領から感じたのとは何倍も、いや何十倍もの
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