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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
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違いないし、もう一方の男は・・・少しはやるかもしれんが、狙撃で何とかなるかもしれん』
『よし、さっさと片付けちまおう。商談が立て込んでいる内にな。お前ら、配置につけ』

 私兵が散開していくのを見て、俺は慌てて私兵達の首領に向かって、命令の実行を引き止めようと言い訳を繕ったさ。・・・その口から出てきた言い訳も、僅かな時間稼ぎにすらならなかったのだがな。

『も、モウ少し待たんカ?』
『へっ!ビビってんじゃねぇぞ、糞トカゲ。今更男二人死ぬ程度でチビリかけてんじゃねぇぞ』
『そうデハなくテだな・・・そうだ、や、奴らが何ヲ渡ソウとしていルのか確かめナイのか?』
『言われてみりゃそうだな、物が本物か如何か見極めなきゃな。・・・お、ほら、今あいつが箱を開けたぜ。・・・間違いない、例のものだ。これでお前の懸念も晴れたな』

 俺は益々に焦りを募らせる一方で、私兵達はあっさりとその位置に着いてしまった。

『準備は出来たみたいだな。ほら、あんたの合図で皆動くんだ。外すんじゃねぇぞ』

 首領が睨んで来るのを見て、俺は恐怖を抱きながら弓に矢を番えようとした。だがその一矢が共に向かって放たれるのを考えると、指先が震えて如何にもならなかった。

『殺らなかったら、奴等より先に俺があんたを殺す。殺りな』

 俺は小心者だ。奴がそう囁くのを聞いて一気に恐怖が込み上げてきたんだ。その恐怖は友に対して危害を加える意思を抑えてきた、僅かな理性をあっさりと踏み倒してしまったんだ。

『・・・ックゥッっ!!』

 俺は矢を射った。結果はお前が語った通りだ。本来なら俺は真っ先に凶悪犯を狙い撃つ心算だったが、だが出来なかった。

『よしっ、命中だっ!やっちまえっ!!!』
『おおおっ!!!』

 そして俺は流れるままに生き残ったお前へと襲い掛かった。その場で踏み止まるのも私兵達に疑心を募らせるもので出来なかった。それに何より、お前へに対して隠しようの無い害意を抱いてしまった己が許せなくなり、それを抱くくらいならいっそお前を殺して早く忘れてしまおうと思ったんだ。 
 ああ、漸く思い出したよ。あの日は確かに、俄かに欠けた月が昇っていた。



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「どうしヨウもなかッタ。あの男ニ逆らエバ、確実に殺さレルと思ったンダ。だカラやった」
「・・・・・・」
「お前が無事に逃ゲタ後、自分が最悪ナ人間に思えてキタ。友の命と己ノ命、それを他人ニ強制されるママに天秤に掛けようとタノだからナ。そしテ、最後は自分で天秤ニ掛けタ。・・・俺ハどうしヨウもない屑ダ。そして今モまだ、そのままノ自分を引き摺ってイル」
「・・・俺を襲った奴らは如何した?」
「・・・死んダヨ。皆、マティウスに殺さレタ」

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