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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
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んだ?』
『相変わらず釣れないねぇ。君は人との接し方に著しい欠陥を担いでいるよ。・・・まぁいい。お望みならば本題に入ろう』

 奴は振り返り、肘辺りまで赤く染まった灰色のロープを躍らせながら俺に任務を告げた。

『明日の未明、タイグース樹林で盗品商人がある人物と密会を行うという情報を掴んだ。死霊術に関する重大な代物を手渡す心算でいるらしい。しかも驚いた事に、取引相手は凶悪な殺人犯である事が判明した。
 ・・・我等魔道学院はこれを断固として阻止する義務と責任がある。死霊術は魔人の魔術。決して唯の柔な人間が触って良いものでも、扱って良いものでもない。分かるかね、ビーラ?』
『・・・ソウだな。お前ノ言う通りダ』

 あいつは魔術学院の教授である以上魔術に対する熱意、そしてとりわけ召還術に関する技術は常人を上回ったものだったが、しかし一方で悪魔のような気狂いな物の考え方に取り付かれていた。だから其の為に魔術とは無関係の人間まで殺害するのは不思議ではないし、俺がそれを止めるよう諭す事が出来る立場でも無かった。納得してやったさ、何時もの事だと思ってな。

『話が相変わらず早くて助かる。君の任務はこうだ。私の兵と共に密会場所に潜伏し、商人達が密会を行っている時を見計らって奇襲を仕掛けるんだ。そして、その悪魔の代物を確保して此処まで持ってくるんだ。それに関する処分を、私が責任を以って行う』
『商人と犯罪者ハ如何スル?』
『殺すんだ。慈悲もかけるな。・・・仮に君達が逃したとしても顔さえ割れれば賞金頸として手配できる。意味は分かるかね?』
『分かってイル。仕損じタ場合に備えて、殺害対象の風貌や特徴ハ絶対ニ忘れン』
『・・・出立は明日は早い方が良い。兵達も既に待機している。成るべく早い内に顔合わせを済ましておくのだな』
『そうシヨウ、ではこれデ・・・』
『ビーラ』

 奴は研究室を出ようとした俺に振り向いて、そして嫌味ったらしく言ったよ。

『愉しんで行けよ』

 何時もの狂いっぷりに輪にかけて冷酷さが増したような表情で、思わず背筋が震えたな。だが俺はそれすらあいつの唯の気紛れだと思い込んで、その場を後にしたんだ。  



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「そシテ、俺は奴ノ私兵達と共に樹林ニ向かイ、その時を只管ニ待ったヨ」

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 タイグース樹林。北嶺のエルフ自治領に近いその樹林の一角で俺達は身を忍ばせて待機していた。俺達が潜んで少し経ってから商人が乗った馬車が来て、そしてその後に一人の男が現れた。垂れ眉と垂れ目の、若さの溢れる男だった。そう、お前だ、ユミル。

(如何いう事ダ・・・何故お前ガ居る!?)
『なぁ、あいつらがそうだよな?』
『だな。商人は人相が間
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