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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
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り、ミルカは勝利の確信を抱いた。

(よしっ!!)

 その勇壮で小さな美顔が、走り抜ける衝撃と共に歪んだ。男が放った直刀蹴りが脇腹を蹴り付け、まるで其処に存在している鉄の鎧を無視するかのように、ミルカの腹部に強烈な衝撃を与えた。   

「っ!?!?」

 一瞬動きが止まって剣による裁断が止まり、嗚咽が口元から毀れそうになる。男は痛覚が通っていないかのように振り落とすように無理矢理左腕から剣を引き離すと、その手でミルカの襟元を掴み取るとその矮躯を片腕だけで放り投げた。軽々と投げられたミルカは顔面から壁にぶつかり、悲鳴を零す事もなしに力無く床に転がった。

「ミルカ!!!!」

 慧卓が思わず叫び、拘束の手が俄かに緩んでしまう。男は右手を振り回すように押し遣って慧卓を退かせ、解放された剣を逆袈裟に振り回す。慧卓はそれをかろうじて剣で防ぐも勢いを正面から受けて足をずずずと後退させ、次いで飛んできた直刀蹴りに胸を打ち、壁に勢い良く背中を打ち付けて地に伏せた。
 慧卓は咳き込みながら頭を上げて、身をなんとか起こしていく。胸部からずきずきと走る痛みは、セラムに来た始めての日に感じていた、あの懐かしき骨に皹が入ったような痛みと似たものが響いていた。而してその瞳は沈鬱なものとならず、寧ろ爛々と燃え盛るものがあった。

「・・・容赦なんて・・・するもんかっ」
「・・・そうですよ。絶対に赦しませんって・・・!」

 慧卓は瞳を向ける。戻すものを全て戻し終えたパウリナが、血池から剣を拾いながら男に向かってその切っ先を向けていた。最早床に転ぶ剣は無い。無事なままで居た最後の一本が、吐瀉の匂いを口から漂わせるパウリナによって握られたのだ。

「お、おい。大丈夫なのかよ?」
「見苦しい姿のままで、御免なさい。でもっ、私を助けてくれた人が嬲られるのを、ゲロ吐きながら見続けるなんて無理ですからっ・・・!」
「・・・無理はするなよ」

 慧卓は大きく深呼吸をして、改めて男を睨み据えた。左腕の二の腕辺りからどくどくと勢い良く流血しているに関わらず、男は人形のような鉄面皮で睨み返してきた。良い度胸であると、慧卓は更なる闘争の心を滾らせていった。  



ーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・俺はあの後、マティウスに呼バレて研究室に居タ。・・・お前ガ仕事を受ケタ部屋ダ」

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 あいつは何時ものように室内を暗く閉ざし、松明の明かりを頼りに手術台に向かって何やら作業をしていた。背中姿ではっきりとは見えなかったが、あの時の臭気は今でも覚えている。生臭さを隠す事を微塵も考えない血の臭いだった。

『やぁビーラ、我が息子よ。まぁ楽に掛けてくれ』
『世辞は不要ダ。一体何の要件デ俺を呼
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