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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の2:一日の終わり
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ぇ・・・」

 初めての人殺しに加担しただけあって、心に圧し掛かる負担が大きい。而して込み上げる筈の吐き気は疲労と、胸と頭部に走る痛みを前に消え去り、荒れた息のみが口元から毀れ出た。
 ミルカは打ち伏して身動きをしていないパウリナへと近寄り、その息と脈を確かめる。

「・・・大丈夫です。まだ、生きています」
「た、助かったよ、ミルカ。お前がっ、っっ、左腕を斬っていなきゃ、俺達はとっくの昔に死んでいた・・・」
「有難う御座います。ですが何よりも先ず、貴方は己を褒めるべきです・・・。素晴らしい勇気でした、ケイタク殿。腑抜けた顔に似合わず、やる時はやるんですね」
「ほ、放っておけ・・・」

 慧卓は億劫に身体を動かし、石柱に身を預ける。激しき戦闘で疲弊した身体にとって、ひんやりとした石壁は一服の清涼水の如き癒しを送ってくれた。ミルカもかなりの疲弊をしているのか、意識を落としたままのパウリナを見遣りしつつも、枯れた雑巾のような苦しげな息を吐き出していた。
 こつこつと、二人の意識を固まらせるかのように石壁を叩く音がしてきた。その音は上階より響き、そして階段の方から向かっているようだ。二人は歪んだ表情をしつつも頷き合い、その手に剣を手繰り寄せた。柱へと急いで隠れようとしたが、身体が思いの外重く感じて足が進まない。隠れるか隠れないかギリギリのタイミングで、男が階段を降りて現れてきた。地味なロープを羽織った、垂れ目、垂れ眉の渋い見た目の中年男性である。体躯は引き締められてがっしりとしており、その手の剣は刀身を赤く濡らしていた。

「・・・終わったぞ」

 男は静かに声を掛ける。まるで石柱に隠れた二人の存在を見切っているかのように。男は再度、沈鬱げに言う。

「もう、全部終わった」
「・・・何が終わったんだ?」
「け、ケイタク殿っ・・・!」

 ミルカの静止も聞かずに慧卓は声を掛けた。男は慧卓が居る方へと目を向け、序でミルカが隠れている方へと見遣る。

「・・・パウリナは無事か?」
「・・・知っているのか?」
「王都まで案内してくれた。口は悪いが、根は良い奴だよ。其処に居るんだろう?」
「・・・ミルカ、彼だ」

 慧卓の言葉に、ミルカは俄かに不満げな口元を浮かべながら頷いた。

「彼女は今、我々が保護しています。貴方がユミルさん、で宜しいのですね?」
「そうだ。重大な訳が有ってパウリナと逸れてしまった。彼女には心配を掛けたと思っている。すまなかった」
「その言葉は彼女が目覚めてから言ってあげて下さい。彼女、血を嫌悪しているのにも関わらず、我々に協力の意を示して奮戦してくれたのですから」
「っ!彼女は無事か!?」
「無事です・・・此処に居ます」

 ユミルは弾かれたように駆け寄って、柱に背を預けているパウ
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