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偏に、彼に祝福を。
第二章
五話 変ホ長調
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負けても。そうしてそれを私は追う。
「……兎角、私達は勝ちます。協力の提案はありがたいですが、もう時間も遅いです。明日結果を聞くことにして今日はお帰りになってください」
「私達とは意気込みが違う……。私達が知らないことを知っているね。勝った時と負けた時の結果。違う?」
「ご明察です。私達が勝てば彼は戻ってくる。負ければ今後一切彼と連絡を取らないし探さないという条件です」
「勝手に、そんなことを」
 彼女の怒りももっともだろう。皆、彼が退職したとしても個人的に彼とまた会おう何て思っていたのだ。
「私の推測ですが、恐らく彼はこんなゲームをしなくても姿をくらましたでしょう。心当たりはあるんじゃないですか?」
 凛さんは黙った。彼女も薄々気づいているだろう。彼が退職する意味を。
「そういうことです。今日は帰ってください」
「彼が何処にいるのかあてはあるの?」
 黙るのは、こっちの番だった。今はまだ、捜索範囲は日本本土なのだ。
「ないんでしょ? 私達はマネージャーがつける子は首都圏に散らばる。終了時刻までね。もし、何か情報があって行ってもらいたい場所できたら言って」
「無茶です!」
「……泰葉さん勘違いしてるな。例え泰葉さんと達也さんのゲームだとしても、勝ちたいのは私達もなんだよね。もし、私達の行動で、勝てる可能性が1%でも大きくなるなら私達は動く」
 それじゃと声を掛けて、大きな音がした。恐らく彼女がヘッドセットを外した音だろう。
「泰葉さん? 今凛さんが何人かを連れて外に行きましたが何かあったんですか?」
 それは、とまで言って、自身の声が震えていることに気がついた。何だろうと思っていると、側の慶さんが私のことを抱きしめた。私はそこで初めて、自身が泣いていることに気がついた。


 泣き止むまで、三十分程かかった。慶さんの服を涙で濡らしたことを謝って離れた。
「大丈夫、泰葉ちゃん」
「ええ、大丈夫です何も心配はありません」
 しかと返事して、PCの元へ向かう。やるべきことをなそう。
 チャットで、拓海さんに携帯の唯一のアドレスにメールを出すよう指示した。空メールを。
 暫くして、その場にいる私、慶さん、明さん全員の携帯が鳴った。達也さんからのメールだ。確認すると、それは件名も内容もない、所謂空メールだった。
 メールが来てすぐ、PCにチャットがきた。
『俺が空メールを送ってすぐ、全員に空メールが来たみたいだ』
『もしかして、そのアドレスは達也さんがメール転送に使っていたものかもしれません』
『なんでんなもののアドレスを残したんだ?』
『私達、いや、泰葉から全員へ何らかのメールを送らせる為だろう。それも彼に偽装して』
 聖さんからのチャットが、恐らくは正しいのだろう。理由は分からないが。
『この携帯に今メ
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