偏に、彼に祝福を。
第二章
五話 変ホ長調
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したのは事務所組のクラリスさんとゆかりさんだった。変ホ長調、そして大砲を使う曲なら、少しクラシックをかじっている人はすぐにわかる、らしい。
彼女たちが出した答えを、私は口にだした。
「チャイコフスキー、1812年」
四桁の、番号。
早速拓海さんにメールをした。返ってきた返事は『パスワード解けた』だった。私は彼女に携帯を持って一度帰って来て欲しいとメールを更に返した。
十九時になる前に、事務所組からチャットがあった。拓海さんが返ってきたらしい。私はビデオチャットソフトを使っての通話を提案した。ヘッドセットは、先ほど近くのデパートで購入済みだ。デパート内で、あたりをキョロキョロしながら歩くアイドルとそのマネージャーを見つけた時は、なんとも言えない気持ちになった。
通話を開始すると、拓海さんの言葉がヘッドホンから流れた。
「泰葉か? 携帯の中身、伝えんぞ。……登録されているアドレスが、ただ一つだ」
「拓海さん、まだそのアドレスには何も送らないでください」
おう、と拓海さんから返ってくると同時に、何か音がして、次にヘッドホンから流れたのはゆかりさんの声だった。
「何かありました?」
「こちらは何も。事務所はどうですか?」
「アイドル達が次々に返ってきました。どうやら凛さん達が中心になって、向こうでも捜索隊を結成していたようです。それで、もう暗くなったので、十八歳未満を帰らせるようです。凛さん、奈緒さん、加蓮さんの三人は事務所に残って、私達に協力したいらしいです。今、凛さんに変わります」
また、音がして、もしもし、と少し緊張気味の声が聞こえた。
「凛さんですね?」
「うん。私達は、この周り、とりあえず都内で達也さんと行ったことがある場所をひと通り見て回った。いなかったけど」
「そうですか。情報有り難うございます。私からも一つ。恐らく達也さんが、以前のアパートを出て行った先の滞在先を突き止めました。既に姿はありませんでしたが、そこに置かれていた携帯を見つけました。十八時のヒントも、その携帯に対するものでした。恐らくは何か、彼の後取りを追う手がかりになるでしょう」
「そこまで、私達に教えずに調べていたんだね」
ああ、彼女がこちらにコンタクトを取らなかったのはそれか。
「ええ。その通りです。……凛さん私達は本気で彼を追うつもりです。人が多すぎても指示に支障が出ますし、尚且つ全てを話すのは、あまり得策でもありません。
この勝負は、私の、私達と達也さんのゲームです。巻き込まれた皆には、伝えなかったことを謝ります。ですが絶対に勝ちます。勝ってみせます。その為に、その為に」
ちひろさんもクラリスさんも自身の立場を賭けたのだ。ちひろさんは、私達が負ければ事は有耶無耶になる。だがクラリスさんは辞めるだろう。勝っても、
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