偏に、彼に祝福を。
第二章
四話 売られた喧嘩
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話が来た。
「平間達也という名前で部屋を借りている人間はいない。ただ、昨日達也に人相の似ている人間がホテルに滞在し、ホテルの受付に平間という人間を尋ねてきた者がいるなら部屋に連れてくるよう言ってあったらしい。そんで、部屋に着いても中に反応がない。受付には自身が居なかったら部屋に入れて待たせておくようにも伝えていたらしいから、俺は部屋に入ったよ。中は、綺麗もんだったよ。荷物も何もない。ただ一つ、キーがあるだけだった」
彼女の言葉を脳内で組み立てながら、考える。彼はここで潜伏先を隠すために一芝居打ったのだ。残されたのが鍵一つなのは、何かのヒントなのだろうか。
「何のキーでしたか?」
「アタシのとよく似た……バイクのだ」
バイク? 何故そんなものを。
「そうですか……。他に何もないようでしたら近場で遊んでくれていて結構です」
「あぁ? 何でだ?」
「もし、今後与えられたヒントや情報で、またそちらに行くことになるかもしれないからです。即戦力として美世さんがこちらにいますから、拓海さんはそちらで待機していてください」
「わーった。じゃあな」
通話を切った私は、今自身が打てる手がなくなったことを自覚すると、青木姉妹に電話を掛けた。
十五時、次のメールが皆の元へ送られてきた時、私は青木姉妹の家に居た。今後の動きを彼女たちと共有するためだ。事務所にはゆかりさんと、私が事務所を出る間際に顔を出したクラリスさんを残した。事務所のゆかりさんが触れていたPCは社内ネットワーク外の、単純な調べ物用として達也さんが以前設置したものだったのでビデオ通話のできるソフトを入れて来た。あのPCが設置されたのは今年の二月だったけれど、今それを使っているのは偶々なのだろうか。それとも、既にその時から彼の計画が始まっていたのだろうか。今は、分からない。
十五時と同時に送られてきたメールの文面はこうあった。
『377923.14平方キロから227976.10平方キロに、2/3にまで面積を絞ったのにまだ広いと思っているだろう?
だから、次のヒントを十八時に皆に送ることにした。だが、もう既に諦めてしまった人もいるだろうから、これだけは明記しておこう
当たり前だが、私は誰もが知らない、誰もが聞いたこともない辺鄙な場所に隠れているわけではない。受信者の誰かは聞いたことがあるだろうし、もしかしたら誰かが行ったこともあるかもしれない場所だ。案外、皆の直ぐ側なのかもしれない』
僅かに気持ちが高ぶった。そうだ、これはゲームなのだ。勝利が不可能なものは彼も出さないだろう。
「泰葉ちゃんこっち」
明さんに呼ばれて、彼女の私室に入った。彼女の机にはマウスとモニター、キーボード、側にはプリンターが置いてあった。起動したばかりなのだろう、モニターにはOSが表示されて
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