偏に、彼に祝福を。
第二章
四話 売られた喧嘩
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ていくと、ある名前が出てきた。
ブラウザを立ち上げてその場所の名前を検索する。出てきたのはビジネスホテルだった。
口に手を添えて考える。ビジネスホテルの近くに駅はない。私は事務所とビジネスホテルの道順を車を使用の条件で検索した。別のタブを開き、次は関東圏の路線図を表示……時間がかかる。
処理の長さに少し苛つきながら待ち、描画された地図を私は眺めた。
事務所の扉を開け、中に踏み入ってくる音が聞こえた。私はそちらを向かなかった。私の近くまで寄ってきた足音は二人分。誰かは振り向かなくてもわかる。
「泰葉、来たぞ」
拓海さんの言葉に、私はモニターから目を離しお二人を見た。いつもの私服ではなく、拓海さんはライダースジャケットとジーンズを、美世さんはライダースーツを着用していた。二人共サポーターの類をきっちりつけて、脇にヘルメットを抱えていた。
「お待ちしておりました。まず拓海さん、貴方に早速行ってもらいたい所があります」
「何処だ?」
「先程のメールに記載してあった場所です。道順はこちらを」
拓海さんは身を乗り出してモニターを操作し、近くの幹線道路や高速を調べていた。
「ここの近くなら、通ったことが何度かある。あまり迷わずに行けるだろ」
「有難うございます。恐らく彼は居ないでしょうが、何かしらのヒントが得られると思います」
「まぁ、そりゃいいんだが……お前ら、このゲームが達也が起こした事も、そうして勝利結果も知っているらしいな?」
「否定はしません」
「そりゃなんだ?」
「勝利報酬は彼の復帰です。彼が何かしらのゲームを行う事は事前に彼と取り決めてありました。まさか全員参加とは思いませんでしたが」
彼女はまだ納得してはいないようだったが、私の言葉に嘘はない。これ以上語れることなんてあまりなかった。
「……負けたら?」
彼にもう関わらない。という約束を思い出して、これもまたかくれんぼにした理由なのだろうとふと思った。
「このかくれんぼの終了以降、彼の捜索も、連絡も打ち切るという条件です」
拓海は暫し口を開くことも足も動くことを止め、ただ私を見ていた。
凡そ五秒ほど経った時、彼女は口を開いた。
「……成る程なぁ、成る程、成る程。あいつは、とんでもなく上等な喧嘩の売り方を知っているじゃねぇか」
口角を上げ、威圧的とも取れる顔を見せる彼女が、何故か私は、楽しそうに見えた。
「いっちょ見つけて一発ぶん殴ってやるか」
これは喧嘩じゃねぇ、筋ってものを通すんだ、と小さな声で続けた彼女は、事務所の出口に足を向けた。
「拓海!」
「美世は待っとけ。何大丈夫だ三十分で向こうに着くさ」
彼女は背中を向けたまま、空いた左手を肩より僅かに上げて一時の別れの挨拶をした。
十四時を過ぎた頃、拓海さんから電
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