暁 〜小説投稿サイト〜
MA芸能事務所
偏に、彼に祝福を。
第二章
三話 かくれんぼ
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 四月の暮れ、彼が退職したことになり事務所に顔を見せなくなった翌日の真昼、事務所の沢山のアイドルとちひろさん宛にメールが届いた。メールアドレスは誰しもが知らないけれど、ただこれは達也さんからのものであると、文面を見ればすぐに分かった。
『これからゲームをしよう。興味が無い者は参加しなくても一向に構わない。
 ルールは簡単、かくれんぼだ。やったことがない人はいないだろう?
 時間は今から、二十二時まで。範囲は日本全土。私を見つけられれば私の負け、見つけられれば君たちの勝ち
 参加する人はこのアドレスに三十分以内に返信してくれ』
 このメールが届いた時、私を含めて十人あまりが事務所に居た。ソファーに座って携帯でこのメールを確認した私は、とうとうこの時が来たのだと思いつつ、携帯を閉じてただ天井を仰いだ。
 内心色々な感情が渦巻きながらも動き出せない私と違って、事務所の中では色々な子が口々にこのメールの事を話し始めていた。ただ一人に届けばいたずらだと思うが、全員の携帯が、まるで地震速報かのように鳴ればただ単なるいたずらとは皆も思っていないのか、送信主を推理する言葉がその口から紡がれていた。
 これはどっきりの企画ではないのか。そういう言葉もあった。ただその意見は大きくはならない。この状況も、ほぼ全員に配られたメールも、番組の演出にしては不自然。そうして何よりも、達也さんはそういうものを嫌っていた。その意思を継ぐちひろさん、そしてマネージャー達がいるのならそんなものを了承するはずがない、と誰もが信じていたから。
 これが番組の企画ではないとするなら、残る送り主は狭まる。自然アイドル達の意見はこれが事務所内部の人間から送られたものではないかという結論に至り始めた。そうしてその中でも、全員のアドレスを知っている人間は限られる。
 事務所内の、アイドル以外の者達が仕掛け人と結論を出して、早速周りのマネージャーや事務員に詰め寄る子たち。だが、返される言葉は決まっている。俺じゃない、私じゃない。だが、その続く言葉に違いがあった。ただ、一人。
 新しく事務所に入ったマネージャーや事務員から口々に紡がれる、外部の人間じゃないか、誰かの悪戯じゃないか、何て無責任の言葉。けれど一人、ただちひろさんだけが、自身が送信主であることを否定はするものの、それ以上の発言を控えていた。
 アイドル達も、周りを疑うのには限界があった。事務でPCを使っているごく一部を除いて他の者達は、触っていたとしても携帯だったのだから。
 そうなると最後に残るのは一人。ここにいる全ての人間のアドレスを知っていて、この場に居ない一人。平間達也さんという昨日付で辞めたことになった男性。皆がこの結論に至れば、後は各人が起こす行動は二つ。このゲームに参加するか、参加しないかの結論付け。参加に傾く人の
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ