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青い春を生きる君たちへ
第7話 嫌いじゃないわ
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「お前ら1年の仕事は何だ?」
「はいっ!チームが甲子園に行けるようっ、先輩方のサポートに徹する事ですッ!」


小倉が睨みつけながら尋ねると、横一列に並んだ後輩達の1人が怯えた顔で、声を上ずらせながら答えた。小倉が舌打ちすると、後輩は更にビビった様子で、直立不動の気をつけを作った。背筋を伸ばす事を意識しすぎると、やたら顎が上がって不恰好で、それは普通に見れば相当おかしい姿勢なのだが、この場には、そのおかしさに笑みを浮かべるような人間は居なかった。


「今日な、ノックでイレギュラーがいきなり出たんだよ。1球目からイレギュラーするなんて、お前らの整備が適当だったとしか思えねえだろ?」
「「「申し訳ありません!!」」」
「仕事できてねえよな。自分の仕事の出来に責任持つのは当たり前だよな?さ、行ってこい」


その小倉の一言で、バネに弾かれたように後輩達がダッシュを始める。証明に明明と照らされたサブグラウンドの端から端まで、全力疾走で往復。待ち受ける小倉のもとへ、息を切らした後輩達が戻ってくる。


「おい、しんどいか?走るのしんどいかって、聞いてんだよ。」
「……しっ、しんどいです!」
「この程度でしんどいなんて、この先が思いやられるな。今のうちによく走っておかねえとな。さ、行ってこい」


戻ってきた後輩の1人に軽い調子で小倉は尋ね、そしてすぐにもう一回のダッシュを命じる。二度目になると、後輩達のスタートダッシュの勢いが落ち、明らかにスピード感が落ちる。ノロく見えるその動きに、小倉は舌打ちした。


「なぁ、まだたったの二本だぞ?何か遅く見えるんだけどさ、俺の感覚がおかしいのか?」
「も、申し訳ありません!」
「え?何?もしかしてしんどい訳?」
「いえ、大丈夫です!」
「あ、大丈夫なんだ。それは感心だ。じゃ、行ってこい。」


ゼエゼエと荒い息を立てる後輩を、情け容赦のない嫌らしい口調で煽り立て、小倉は何度も何度もダッシュを命じる。ダッシュがもはやダッシュに見えないほど後輩達の動きのキレが落ち、小倉の問いかけにマトモに返事ができないくらいに消耗しても、ダッシュの繰り返しは続いた。


「おぉ〜また1年を走らせよんのか〜」
「もう半時間はやってんであれ」
「ま、たるんでるさけな〜あいつら」


メイングラウンドで自主練中の上級生は、サブグラウンドで犬のように走らされ続ける一年生達の姿を目にして、ニヤニヤと笑っていた。かつての自分達の姿を見ているようだが、その事に古傷が疼くようなヤワな神経はしておらず、むしろ、"今は大丈夫"という、セーフティの快楽を味わっていた。1年の月日は、甲洋の掟を自分の身体に覚えこませるには十分な時間であり、それができない奴を淘汰するのにも十分な時間であった。無用な
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