暁 〜小説投稿サイト〜
青い春を生きる君たちへ
第7話 嫌いじゃないわ
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


勝俣と呼ばれたデブは、見た目からして明らかに垢抜けておらず、そのムサさは大古達とは別の人種である事を示している。細い目を更に細めて、やれやれとでも言いたげな様子で差し出されたその手の中に、大古達は購買に置いてある文房具をいくつか押し込んだ。そして矢継ぎ早に惣菜パンを注文し、その合計は5個を軽く超えていた。


「えーと、俺は焼きそばパン二つと、ホットドッグと……」
(……自分でもいくつか頼むのかよこいつ)


昼休みも半ば、購買に来る人は少なくなっているとはいえ、後ろに人が並んでいるにも関わらずに大量の注文をして、やたら時間をとる空気の読めなさには若干イラっとする。が、それよりも、人の財布を当てにしてる癖に遠慮会釈なく必要以上にモノを買おうとする大古達の、強者を装ってる癖にその実卑屈で乞食のような態度には、小倉は無性に、何かをせすには居られない気持ちになった。小倉は列の先頭、レジの近くまで歩みを進め、ニヤニヤと笑う大古の肩を強く掴んだ。


「……なッ!てめぇは…」
「やあ大古直斗クン、ご機嫌いかが?」


小倉の姿を見た大古は、嫌悪と恐れをない交ぜにした微妙な表情を作った。一度ボコられた恨みはあるのだが、かといって、仕返しをやれるような力は自分にない事を分かっている、そんな顔だった。取り巻き連中も、警戒した顔はしているが、それは威圧というより、怯えを表したものになっていた。


「この前はごめんね〜。何せ俺、君のこと、いきなり呼び出して一方的にボコっちゃったんだものね〜」
「……!!」


大古がギクッとした顔になる。さすがに、嘘の証言をした事に対する負い目は感じているようだ。それが分かった途端、小倉にはこの目の前のDQNが、実に小さく可愛らしいものに見えた。


「いや〜俺も悪かったとは思ってんのよ?だからさあ、お詫びの印に、お前の買い物おごらせてくれよ。ああもちろん、お前のお友達の分のも出してやるからさ。ほれ」


小倉はレジのオバちゃんに紙幣を渡した。大古達の分の買い物は十分賄える額だった。オバちゃんからレジ袋を受け取り、大古達の方へ突き出すと、彼らは小倉を睨みながら、袋の中の自分の取り分を乱暴にふんだくった。もちろん礼も言わず、踵を返して立ち去ろうとするその背中に、小倉は明るい声で言った。


「他人の金で食うパンは美味いからな!よく味わって食うんだぞ!」


大古は小倉の方を振り返らず、これ見よがしに舌打ちするのがやっとだった。小倉はその背中に手を振り、そしてずっと軽くなった袋を、勝俣に押し付けた。


「ほら、これはお前の分だ」
「…………」


勝俣は袋を受け取って、微動だにしない。小倉はまたレジの列に並び直すべく、歩き出そうとした。しかし、いきなり伸びてき
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ