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青い春を生きる君たちへ
第7話 嫌いじゃないわ
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やらかしは目に見えて減り、今となっては何も知らない"子犬"達をしつける側に回っていた。


「いや〜、しかし小倉は"優しい"わな〜。」
「ホンマやで。走らしてばっかりで、まだいっぺんもアレやってへんやん」
「俺ら2年がいてまおうとしたら、"教育係の俺を差し置いて勝手な事すんな"て、バチ切れてきよるしなぁ」
「先輩らも不思議がっとるで。ま、さすがに先輩のシバキを止めはせえへんけど」
「甘ちゃんや甘ちゃん。標準語の坊ちゃんの考える事はちゃうわ。」


小倉の同期の2年生達は、教育係・小倉の"手ぬるい"仕打ちに口を尖らせていた。多少の不満はあったが、しかし、小倉は殴り合いはやたらと強く、一軍メンバーに選ばれている2年生でさえも、こと後輩の指導に関しては小倉を無視できないでいた。


「なんだそれはァ〜?それ本当に走ってんのかよォ〜?ふざけてんのかァ?牛歩してんじゃねえよ〜いつまで経っても終わらんぞォ〜」


小倉の声が響く。後輩達は死んだ目をしながら、いつ終わるとも知れない走り込みに息を切らしていた。



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謹慎初日にこそ、保坂が勝負を仕掛けてきたが、それ以降は新たに声をかけてくる者もなく、小倉は毎日、しつこいくらいに話しかけてくる田中の相手をするだけの日々を過ごしていた。しかしまぁ、田中もよく飽きないものである。転校生という物珍しさから自分に構っているのかと思ってたが、だったらそろそろ飽きてきそうなものだが。友達宣言した手前、見放して他の生徒に構いにいくのは気が引けるのだろうか。だったら、ハッキリ言っておいてやらねばなるまい。そんな事全く気にしなくて良いと。とっとと、自分本来の人間関係の中へ戻るが良いと。

そんな事を考えながら、小倉は今日も購買のコッペパンを買いに行く。コッペパンなんて、大して美味いもんじゃないし、その証拠に毎日売れ残っている。が、何故か小倉はそれを選んで食べてしまう。懐かしい味がするからだ。なぜかと思って記憶を辿ってみると、甲洋の寮で夜食に出されていた、クソまずいパンに味が似ていた。


「ヨッ、勝俣大明神!」
「今日も恰幅が良うございますねェ、よく太ってらっしゃいますねぇ、毎度毎度ありがとうございますゥ!」


購買にはいつもと違う耳障りな声が響いていた。見ると、見覚えのある顔がそこに居ることに気づく。大古だ。大古と……後の連中の名前は小倉には分からなかったが、だいたい大古みたいなだらしない格好しているから、量産型大古とでも名付けておこうと、小倉は思った。その連中が、1人の太った生徒を先頭にして、購買のレジに並んでいる。


「仕方がねえな〜、お前らはいつも貧乏だからなぁ〜」


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