偏に、彼に祝福を。
第一章
七話 過労と計画
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私はそこで失敗に気がついた。確かにアイドルたちには来ないよう言ってある。だがトレーナー達には言ってなかった。
中に入ってくる彼女たちに続いて入ってきた男にも、私は大層驚くことになる。
「乾か。本当に、久しぶりだな」
おうとだけ彼は答えた。
それから青木姉妹が口々に心配した事を告げる。それに謝ったり、もう心配要らない旨を話しながら、乾がここに来た理由を考えていた。
「乾、どうしてここに?」
「どうもこうもない。そこにいる嬢ちゃんのせいだ」
聖を見ながら彼は言う。見た目私と変わらない彼が、聖さんに対しての表現としては不適切にも思えるが、私が彼と知り合ったのは二年前なので彼の実年齢は私は知らないし、また彼も教えてはくれていなかった。
「お前の携帯にかけた電話をこいつが取ったんだ。それでまぁ、お前が倒れたことを聞いてな。お大事にで済ますはずだったんだが、何故かお前が倒れたのは俺のせいだろうと責めてきたんでな。弁解しても聞かないししまいにゃ警察に行くぞなんて言われちゃ顔出さないわけにはいかなかった」
「聖、俺が倒れたのは過労だぞ? 彼は関係ない」
「そんなこと知っている。そうして、達也、お前が彼に何を頼んでいるかということもな」
ため息をつく。気づいて欲しくないことによく鼻の効く乙女なことで。
何でまた気がついたんだと言えば、ボイスレコーダーを彼女は揺らした。あの時のバッグの中身か。
「貴方達には関係ないだろう?」
「んなことあるか! 行き過ぎだぞ。過保護にも程がある」
「もう一度言う。貴方達には関係ない」
「達也、お前は何なんだ。何が目的でここまでの献身をしていられる? 年末年始一度でも家に帰ったか? 私達は達也が倒れる前の一週間、探偵を雇っていた。そのことは謝る。だがな、報告書を見た私達は激怒せずには居られなかった。何故一度も帰らない。そうして」
聖は乾を睨んだ。
「こんなやつを雇って労働の報酬である金すら費やし……お前にとってアイドルは何なんだ?」
こんな奴呼ばわりだぜと小声で乾が呟いた。恐らくはわざと聞こえるように。
「アイドル、か」
私にとってアイドルとは何だろうか。生きがいを感じさせてくれる者達のことだろうか。
違う、違う、違う。笑わせる。この行為はただの―――
「わからない。けど、彼女たちが輝いてくれているなら私はいい」
「……何人かが、達也さんに好意を抱いていること気づいています?」
慶の言葉に軽く頷いた。
「薄々は」
嗚呼、でも今ままでは薄々と。今でははっきりと。アイドル達とプライベートで良く接する彼女がそう言うなら間違いはないだろう。
彼女たちの好意は私にとって重たい。そしてその好意はアイドルのモチベーションすら左右する。
「貴方が上手く隠しても、いつかはそういう子
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