偏に、彼に祝福を。
第一章
六話 中禅寺湖の畔
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ない。ただ純粋に同じ女として、秘め事を暴く気はないという意味だと理解した。
「同意する。さて、俺も挨拶に行きますか」
彼女の元を離れて、参拝の終わった四人とすれ違う。四人が二礼二拍手一礼をした手前、そのまま歩いていくわけにはいかず、また他の参拝客もいないことがあったのできちんと二礼し、五十円を入れ鐘を鳴らした。そうして二拍手。
『神は人の敬によりて威を増し、人は神の徳によりて運を添う』という言葉を嘗て私は教えられた。そもそも参拝とは、何も願いを言いに来ることではない。神に感謝しに来ることということも。
つまりできることなら、社殿につくより前、鳥居をくぐるその時からの作法、否、もっと前、日頃の生活から神を敬うことからするべきなのだ。
で、あるからに。私は礼儀上の感謝を心のなかで簡素に終わらせた。流石に社殿の前でだけ敬っても仕方ない。それよりも私は挨拶を念頭に置いた。この場所に来るのは一度目だ。まずは初めて伺った神に挨拶をするべきだろうとの思い故だった。
これまた非常に簡素な挨拶を済ませた私は、残りの動作も済まして彼女たちの元へ戻った。
「随分長かったではないか?」
麗の言葉の通り、ごちゃごちゃと考える内に前に行った四人より時間がかかっていることは自覚していた。
「どうでもいいことを、色々考えてた」
肩をすくめて応えると、麗の参拝を促した。彼女は行くつもりはなかったのか断るが、最初に参拝した四人に狭まれては、仕方なしというふうに彼女もまた参拝した。
麗が参拝を済ませている途中、泰葉がそう言えばと呟いた。
「神は人の敬によりて威を増し……なんでしたっけ、そんな言葉がありましたよね」
その言葉に対して、他の三人は思い当たらないと口々に言った。
「私の勘違いみたいですね、ごめんなさい」
しゅんとした泰葉を見て、ただ眺めていた私は口を挟んだ。
「『神は人の敬いによりて威を増し、人は神の徳によりて運を添う』だったかな?」
意味は、私が続けるべきではないだろう。
泰葉は驚いていて、他の三人はやっぱり思い至らないという顔持ちだった。
「そうだったと思います。よくご存知ですね」
「そっくりそのまま返す。よく知っているな。俺は偶々教えられただけだ」
「ねぇねぇ、それってどんな意味なんです?」
慶の言葉に私は答えかねた。代わりに泰葉が答える。
「そのままの意味です。神は人に敬われることによりその力を増し、また人は神を敬うことによりより良い運を授かるという意味です。神を疎かにしたり、また都合のいいものと捉えずに敬うようにという戒めですね」
その言葉に思うところがあったのか三人は顔を合わせた。
「あ、私さっき神にお願いごとしかしなかった」
「え、おねーちゃんも?」
「皆さんも?」
口々に三人が苦虫を噛
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