偏に、彼に祝福を。
第一章
六話 中禅寺湖の畔
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ないクラシックだよ」
そうして一番思い出深い曲だ。
「そうでしたか。ではまたボレ―――」
「あ、達也さん!」
声がした方を向けば、明がこちらに向かって走って来ていた。
「お早うございます! お早いですね」
「お早う。その言葉そのまま返すよ」
「ご一緒しても構いませんか?」
構わないと二人で応えて、明もまた足湯に入った。
「中禅寺湖走ってきたんですけど、釣りしている人が結構居ましたよ」
「ほう。ここから少し行ったところに湯の湖ってところがあるが、そこにも釣り人がいるんだよ。肇が、確か釣りが好きだったんだよな? 今度教えてやるか」
「達也さん、ここに来たことがあるんですか?」
ゆかりが尋ねてきた言葉になんて返そうかと思ったが、結局本当のことを言うことにした。
「何年か前に友人たちと一度な」
その後十分程話して、明は朝風呂に入るとの事で旅館に向かい、私とゆかりもそれに連なった。
朝食後、チェックアウトを済ませた私達は榛名神社に向かった。
「ここが榛名ですか。綺麗ですね」
「泰葉、ここというかな、結構歩くぞ?」
「え、そうなのおねーちゃん」
「ああ。確か700m程ある。私が早く着たかったのはここが混みそうだったからだ。さぁ人が少ない内に行くぞ!」
魁は麗、それに連なるように明と慶が続いた。
「達也さん、行きましょう」
「ゆかりちゃんの言う通りです。遅れちゃいますよ!」
私の左右をゆかりと泰葉に埋められて歩き出す。女性陣はこの寒い中強かだ。京都の地主神社の時といい、神社につくと何かが女性の中で目覚めるのだろうか。
途中の土産屋は流石に開いておらず真っ直ぐに社殿へと向かった。社殿とご神体の御姿岩の元まで着くと、麗は全員を社殿の方へ顔を向けさせた。
「二礼二拍手一礼って聞いたことがあるだろう? 途中で挟む鐘を鳴らす動作やお金を入れるタイミング何かは場所によって違うらしいが、この際そんなことはどうでもいい。全員きちんとお詣りしてこい」
その言葉に、四人は素直に頷き賽銭箱に向かった。後に残ったのは私と麗さんのみ。
「結構しっかりさせるんですね」
「何、神仏を真剣に信じているわけではないさ。ただ、お詣りという小さなことでも、『お詣りしたから大丈夫』という自信がつくからな。私の妹達にもあの二人にも必要なものだ」
同意して、賽銭箱の前の四人を眺めた。数々の動作の順序に自信がないのか、顔を見合わせていた彼女たちも、両手を合わせ祈る様は、どこか真剣だ。
「彼女たちは何を思って手を合わせているんですかね」
私の無意味な問いかけに、その話し方をやめろと最初に言ってから、麗さんは応えた。
「何だろうな。分からんし、そうして知りたくもないさ。彼女たちの願いなんて」
言葉とは裏腹に、彼女の言い方に刺は
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