偏に、彼に祝福を。
第一章
四話 彼女たちの成功
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では、遠慮なく達也さん、と。私のことも岡崎と言いにくいようでしたら泰葉と」
「言いにくいことはないよ」
「実は是非泰葉とお呼び頂きたいのです。私だけが名前で呼ぶのは、と」
彼女は本当に変わったな。私も、一つくらいは変わろう。
「分かった。泰葉、でいいか?」
ええと力強く応えた彼女はその顔に、美しい微笑みを湛えていた。
十一月になった頃、私は入念な準備と十分な下積みの後の後、渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒の三人ユニットを結成し、ライブの開催を決定した。それもユニット結成すぐに大型会場で。
賭けというほどでもなかった。この三人はかなりの実力を、人気をつけたと思っている。トレーナー陣も同様にだ。ほぼ確実に成功を収めるだろう。なので三人にこの企画を話したとき、最初は不安そうであったがトレーナーや私のお墨付きということを力説した結果やる気をだしてくれたようだった。
とはいえライブ当日、楽屋を覗けば、案の定少し緊張した面持ちの三人がいた。三人を集め、もう一度舞台の流れを簡単に話す。ステージの上でのことを考えさせ難しいことは考えさせない為に。
「分かったか?」
口々に了解の意を返す。
「できるかな」
ボソっと、加蓮が零した。
「できるだろう」
私は間髪入れずそれを拾い上げた。
「俺もちひろさんもトレーナーさん達も全員が認め今お前たちはここにいる。俺は兎も角、あの人たちの人を見る目は本物だ。彼女たちを信じてやれ」
そうして、信じられたお前くらいはステージの上に立ってやれ。後は歌うことも踊ることもきっと、お前自身がしてくれる。
「プロデューサーは、見てくれるの?」
「当たり前だ。ファンの誰よりも近いわけではないけど、ファンが決して立ち入れない舞台袖から」
ライブ中出来る限り、ずっと。
「なら、頑張ろう」
奈緒が自信を鼓舞した。
「そうだね、やろっか」
それに続くように凛もまた自身を鼓舞した。それでこそ、アイドルだ。
「俺はお前たちを誇りに思うよ。いつかきっと、もっと上の場所へと行けるだろう」
遥か高みへ。きっと彼女たちなら。
スタッフが楽屋の扉を叩いた。もう部屋を出ていかなくてはならない。
凛、そして奈緒が出口まで移動する。その足取りに迷いはない。
加蓮が最後に続き、部屋を出る一歩手前でこちらを振り向いた。彼女は笑った。
「もしかして、プロデューサーが一番心配なんじゃない?」
「え?」
驚くが、考えてみればそうかもしれない。本当に信じているなら、最後に零した誇りとかいう言葉も今いうこともないし、そもそもここに来ることもない。
「大丈夫だよ、私達」
それじゃと続けて彼女も部屋を出ていった。
一人残された私は、ある人物にメールを出した。
返信はすぐに来た。内容
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