偏に、彼に祝福を。
第一章
三話 違和感
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える」
奈緒は感心したようだった。私としても彼女が嫌がらないでくれるならデザイナーと話し合ったかいはある。
「とりあえず衣装が届くのはもう少し先だ。楽しみにしとけよ」
「おう……なぁ、その、プロデューサー、この衣装ってプロデューサーが考えたのか?」
何を言うかと思えば……俺はそんな技術はない。
「意見は出したが俺はプロデューサーだぞ。そんなことできるか」
「やっぱりじゃん」
は? と間抜けた返答を返した。
「いや、結構私的に辛い衣装とかの事があったじゃん? だから、今回もそうなるかな、って思ってたら意外にいいのだったし、プロデューサーが口挟んでくれたのかなぁってさ」
当たり前だろ、お前はアイドルなんだからと返す。
「そ、そっか……ありがと」
消え入りそうなほど小さな声で感謝の言葉を零した彼女は、じゃ、私もう行くから! と言うと背をこちらに向けた。慌てて去っていく彼女の背中を眺めながら、そういえば彼女からありがとう何て言われたの、彼女の初ライブ以来だな、何てことを思い出した。
それは八月の半ばの事だった。私は浮かない顔でアイドル達を引率していた。茹だるような暑さと晴れ渡る空は、より一層私の心を陰鬱にさせる。
事の発端は美世にある。車のお礼をと訊ねられた彼女は、のらりくらりと躱していたのだが、「では、プロデューサーのお部屋を皆で見てみたい」何て事務所のど真ん中で言ったのだ。彼女が何故その言葉を言うに至ったかは今もわからないが。兎角そういったのだ。そしてそれを多数のアイドルたちが聞いたのだ。それが彼女たちの連絡網を伝い知れ渡り、結局当日顔を出した面子は十五を越えていた。尚その内四人はアイドルではない。トレーナーさん達だ。この時間はこの事務所からは誰もレッスンに行かせてない。そうして私の家への訪問日はなんと奇跡的に予定がなかったとか。私は嘘つきは嫌いだ。
私の家へは事務所から徒歩圏内、それも三十分程で着く。しかも私は自転車通勤。一応彼女たちと共に歩くが、気まずいことこの上ない。まぁ行きの三十分間はアイドル同士で話しているので困ることはなかった。
そもそも十五人という人数が一体どうすれば私の部屋に一堂に会することができるのだろうと。彼女たちに問うに問題なしとの事だったが。
かくして我が家に着いた。二階建てアパートの二階の端っこ。私が玄関の前まで案内するとついてきたのは五人。成る程、別けての見学か。私の家は観光名所か何かだろうか。
その後代わる代わるアイドル達が私の部屋を見回して、お茶の出す暇もなく出ていった。一つのペアで大体三分程だろうか。
「へぇ……結構片付いているんだね」
ああ、その通りさ渋谷。部屋には余り散らかるようなものもないし。
「あ、PC。どんな物見てるの?」
そうだな、北条達
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