偏に、彼に祝福を。
第一章
三話 違和感
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です」
ちひろさんも大層疲れた声で私に続いた。凛は僅かに引いてた。
「今では、皆の仕事で忙しいから嬉しいよ」
「ええ、ええ。何ていいことでしょう」
私とちひろさんを交互に見て、そうと凛は溢し皆の元へ向かっていった。
「ちひろさん?」
「何でしょう」
「給料、もうちょっとしたら滞納分精算するから待ってね?」
「貴方も大概ですよ……借金はあるんですか?」
「ないよ。貯金もないけど」
二人で大きなため息をついて、午後の業務に向かった。
異変を感じたのは八月に入ってからだった。言葉を濁さずに言うならば、女性に好意を持たれている。それはプロデューサーとアイドルの合間に開くべき隙間を埋めるように。
いや、もしかしたら勘違いかもしれない。人生このかた彼女なんて一度もいない身だ。その可能性も捨てがたい。
「プロデューサー、終わりましたよ。もう大丈夫です」
原田美世の言葉で思考から意識を戻した。
「ありがとう。今度お礼はするよ」
いえいえ、機械いじりは好きでやってますからと応えて美世はシャワールームの方向へ消えていった。必要経費は事前にある程度渡してあるが、今後なにか彼女にお返しをしよう。
「プロデューサー。美世さん潤滑油で汚れてたけど、整備?」
神谷奈緒がシャワールームの方向を眺めて訊ねた。女性にしては太い眉は彼女のチャームポイントだ。
「ああ。会社のじゃなくて俺個人の車のな。あと普通の女の子は潤滑油なんて言わないぞ」
アニメの影響か、時々彼女は女性ではあまり知らないようなことも話す。
「細かいことは気にすんなって。そういえばプロデューサーは車以外乗らないの?」
「自動二輪も免許は持ってるよ。車体は持ってないけどな。それより、今度のライブの衣装デザイン出来てるけど見るか?」
頷く彼女に、PCを操作し予め整頓してあるフォルダから画像を表示し全画面表示した。
「これだ。今回は北条と渋谷もほぼ一緒のデザインだな」
「中々可愛いじゃん」
「気に入ってくれて何よりだ」
そうして次の画像にする。それは衣装デザインをPC上で三次元モデリングした人型に着せた画像だった。デザイナーが物好きでわざわざこのようなものも作っていたらしい。
それを見た奈緒は驚いた。
「うわ、結構派手だな」
デザインだけでは分かり辛い部分が視覚化される分、衣装が届いてから下手に羞恥されるよりいいだろう。
「パッと見はな。けどまぁ見てくれよ」
そういって画像を何枚か送った。背後、横、それに上衣下衣別々の物。
「思ったより露出は少ないんだな」
「ああ。お前のダンスに影響があるレベルの露出だとこちらも困るからな。例えば、ここ。切れ込みに見せかけて唯の三角の肌色の生地を使っているだけだ。けど遠目に見ればスリットに見
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