偏に、彼に祝福を。
第一章
二話 スカウト
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一週間ほどが経った。渋谷凛のCD収録も終わり、雑誌等の取材も増やし彼女を推していった。彼女の実家が花屋で手伝っていたこと、また動物好きで事実実家では犬を飼っていたから話題には事欠かない。
一方奈緒や加蓮はトレーナーにみっちり扱かれていた。精神的な面ではかなり心配していたのだが、三人とも仲が良いのが良い方向に転がり各自のモチベーションは維持されているようだった。
そんな土曜日の昼過ぎに、事務所に来客があった。二名。彼女たちが名乗るまで、先週電話をくれた佐藤みちるという人間は頭から抜け落ちてしまっていた。
佐藤みちるとその友人の池谷京子は話を聞きたいとの事だったので応接間に通し、私が話をすることにした。本当は女性であるちひろさんに任せたいところなのだが、スカウトした手前最後までやり通せと言われてしまえば従うしかない。
「来訪ありがとうございます。改めて名乗らせて頂きます。MA芸能事務所の平間達也です。お二人はアイドルに興味がある、との事でよろしいですか?」
いえと顔を僅かに振って、池谷と名乗った方の少女は否定した。話を聞くにどうやらみちるの付き人としての来訪らしい。
迷惑だったかと聞かれたので首を振った。少女がこんな事務所に顔を出すなんて中々できたものではない。ご友人の助力があって顔を出してもらえるなら結構と返す。
「私としてはアイドルに興味があります。ですが質問を幾つか宜しいですか?」
もちろんと快諾して続きを促した。
「この事務所にはアイドルしか在籍が?」
「今のところはそうです。歌手やモデル希望という女性がそもそもいないこともありますね」
「では、例えばモデルは嫌だとか、そういう……我儘をいうことは可能ですか?」
その質問に対して彼女の顔を見た。悪くない。十代後半の少女として十分顔は優れている。流石に面と向かった今は首から下は見るわけにはいかないが、応接間に通すまでそれとなく見たプロポーションも悪くはなかった。
「無論です。アイドルやそれに準ずる職業は、どうしてもモチベーションによって調子が随分変わります。皆さん若いですしそれは顕著です。私は、いえMA芸能事務所としては可能な限り本人の意向を汲みますよ」
「そうですか。では、今、在籍中のアイドルに会うことは可能ですか?」
「今いる者だと、北条加蓮になりますが宜しいですか?」
了承の言葉を得た俺は席を一時外すことを告げ、奥で昼食をとっていた加蓮を呼び出した。
加蓮に、みちるがアイドルに興味を持っていることを告げて、あくまで自然体で話すことをお願いして共にみちるの元へ戻った。
みちるや京子からの質問を有体な内容で返す加蓮の肩を一度叩き、携帯を取り出して電話を受けた振りをして応接間から出た。私がいる前では、みちる達も本音の質問をし辛いだろう。五分程待って部
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