第1話:きっかけ
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親指を突き立てて答える。それを見ている小萌は、子供が怒るように頬を膨らませ、「ダメです!」と突き返した。
さらに膨らんでいく説教。終いには黄泉川まで怒られている始末。誰でもいいから止めてくれ、と九重が必死に願っている中、その救世主は意外にも一人の生徒であった。
「あの、小萌先生。今いいですか?」
「あら、吹寄ちゃん。どうしました?」
小萌の意識が吹寄に向いた瞬間、二人から安堵の笑みがこぼれる。しかし、それにすぐ釘をさすように、「二人は待っててくださいね」と小萌はつぶやいた。
「おい、どうして九重だけじゃなく私まで怒られてるじゃん…?」
「先生…何か悪い事でもしたんじゃないですか?」
「くそう…私はもう逃げる」
「あ、ずるい!」
「お前も逃げればいいじゃん」
「逃げてつかまったんすよね…」
「チャンスは今しかない…それでもお前、学生じゃん?」
「黄泉川先生…それでもあんたは先生なんですか!?」
しょうもない会話をしている中で、チラチラと、九重は視線を小萌に移していた。
いや、吹寄の方が正しい。
もう授業が終わって、二時間は経つ。普通なら学生は帰っているはずだ。九重は、少し気になって話を盗み聞きしていたが、理由はいたって面白味のないものだった。
「ああ…学級委員か」
吹寄は、今日のプリントや、提出物の整理とチェックをしていたのだ。内容は、それができて提出しに来て、小萌が労う、みたいな内容だ。
よくやるよな、と九重は思った。
一学期の最初、学級委員を決めるHRがあった。クラス全体が気だるいムードの中で、吹寄が唯一手をビシッと挙げて立候補をした。
早く終わって良かったと思う半面で、彼女が立候補した理由を考えていた。
どうして、やる気があるんだ?
どうして、頑張るんだ?
お前だって、俺と同じだろ?
Level.0だろ。
「、」
吹寄と目が合い、九重はすぐにそらす。
何だか居心地が、さっきよりもずっと悪く感じた。
「あら、九重また怒られてるの?ちゃんと補習に来ないから」
「…うるせぇよ」
「九重ちゃん!学級委員で頑張ってくれた吹寄ちゃんにその言い方はなんです!」
矛先がこっちに向いてしまい、しまったと思って九重はまた黙り込む。黄泉川に助けを求めようと横を振り向くが、
「あれ?」
隣には黄泉川がいない。
生徒を守るはずの先生は、とっくに生徒を置いて逃亡していた。
「うそーん…」
「ですからね、九重ちゃん。私はあなたにただ頭ごなしに怒っているわけではなく…、そうです!」
小萌先生が何かを思いついたように大きい声をあげた。次に吹寄を見てニコッと笑った後に同じように九重にも満面の笑顔を見せる。
「九重ちゃん、あなたにとても良い宿題をあげましょう!」
「え…何ですか?」
それは、おそらく九重にとって最
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