陰に潜む“影”
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がなっていない。だから私が妻としてつきっきりで教えてやる為に結婚するのだ! 幸せにもなって一石二鳥だ!」
驚く総二と眉をしかめる瀧馬。何を言っているのかは分かるが、何故はっきり言えるのかが分からないといった表情だ。
そこへ、今の今まで置いてけぼりをくらっていたトゥアールがようやく割り込んできた。
「問題ありありなんですよこの年増! 総二様は既に売約済みなんですよ! 何せ私の前世からの恋人であり、婚約者なんですから!!」
「「「……………」」」
「……何で反応してくれないんですかぁ……もっと囃し立ててほしいのにぃ……」
「中二病かとでも言って欲しいのか? あんた」
「そうそうそれ―――じゃない!? ちゃんと帰ってきたのがそれって何でですか!? ……あぁ、学園ラブコメぇ……」
クラスメイトはいっそのこと清々しい程にリアクションが無い。得意げに語っていたので自信があったのだろうが、普通はリアクションがあっても呆れるか瀧馬の様に返すのが当たり前かと思う。
これ以上は聞きたくないと、瀧馬は耳を何とイヤホンで塞いで馴染みの曲を聞き始めた。視線も下げているので、何が起こっているかなども知らずに済む。
『難儀な事さね相棒ヨォ』
「……ああ、全くだ」
やたら長めなやり取りが終わったのをラースから教えてもらい、瀧馬はイヤホンを外して教科書を取り出した。
……何故か布の切れ端が床に落ちており、愛香が教卓の前に居たが、それは瀧馬の知る所ではないし、彼とて知る気も無い。
「チャイム鳴っちゃってるじゃないですかぁ……私の計画がぁ……」
項垂れるトゥアールを余所に、桜川教員は不思議そうな顔を瀧馬へ向けてきた。
「そう言えば君、えっと名前は……新垣君か。新垣君、婚姻届は如何した?」
「……」
「ん? 紙のボール――――まさか!?」
無言で机の中から出してきた紙の歪なボールに驚くと同時、目にもとまらぬ速さで瀧馬はゴミ箱へと投げ入れた。
「な、なにをぉ!? ここまで豪快な行動に出れるとは!? 齢二十八にして結婚出来ていない者の咎を知っていて早々できるものではないぞ!?」
「知るか」
本人には悪いが、正にその通りである。瀧馬にとっては他人の事情などは、余程の事情でもない限り知った事じゃあ無い。ましてや自分の人生まで喰い潰される訳にはいかない。
が、意外や意外、桜川先生は瀧馬の態度に怒る事も無く、新たに婚姻届をトランプの様に広げて出して見せる。
「まあしょうがない。ところで他に欲しい者はいるか? 学園の前男子生徒分は持ってきてある、男子諸君よ、遠慮は
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